この作品を一言で表すなら、超豪華なクロースオーバー作品である。というのもこの作品、登場するキャラクターの半数が、18世紀から19世紀にかけて西洋文学史を彩った名だたる名キャラクターばかりなのである。
ベーカー街の名探偵シャーロック・ホームズと、稀代の大怪盗アルセーヌ・ルパンが知恵比べをするかと思えば、ルパンの仲間には、オペラ座の怪人ことファントムがいたり、ホームズの宿敵・モリアーティが出てきたかと思えば、その配下には女吸血鬼カーミラや、ビクター・フランケンシュタイン、実在の黒魔術師アレイスター・クロウリーに、伝説の連続殺人鬼切り裂きジャックがいるという集結っぷり。ほぼほぼアベンジャーズ みたいなものである。原作者はこの時代が相当好きなのだろう。
これだけでも好きな人には十分魅力的、だがこの作品、実はこの夢のコラボレーション自体はおまけ要素の一つに過ぎない。スター達の織りなす群像劇、その手綱を握り、メインを張るのはなんと日本人なのである。
違法な人体実験により半人半鬼となった元見せ物小屋の「鬼殺し」津軽と怪物専門の名探偵であり、身体を奪われ、生首のみの姿となった不死の少女・輪堂 鴉夜。共通の仇を持つ2人は失った鴉夜の身体を取り戻すため、鴉夜のメイドの静句も含めた3人で鳥籠使いの異名を名乗り、旅をしながら怪奇事件を解決していく。この本筋の物語も非常に面白い。特に津軽と鴉夜のセリフの掛け合いは落語の様なテンポとユーモアに富んでおり見応えのあること請け合いだ。
怪奇ファンタジーとして見ても良し、探偵推理物として見ても良し、異能力バトル物として見ても良しなカオス作品ではあるが、ゴシックな時代が好きな人間にはなんとも堪らない一作である。