去年の魔法少女マジカルデストロイヤーズに続いて、年一で酷いアニメを見るジンクスがついてしまった。
メタリックルージュのせいだ。
魔法少女マジカルデストロイヤーズに関しては正直、OP・EDのクオリティが高いだけで本編のクオリティの低さは序盤から目に見えていた。それが取り返しもつかない程に低いレベルだったので最終回のオチの酷さにもあまりショックは無かった。
「ここまでこのレベルだったからこの程度だよね」
心の準備が出来ていた。
しかしメタリックルージュは違った。
「カウボーイビバップ」「交響詩篇エウレカセブン」「ひそねとまそたん」「ゴジラS.P」など、素晴らしい作品を輩出している名門アニメスタジオBONESの25周年作品。
た・だ・し
数年前に「ゴジラS.P」を生み出したとは思えない低レベルな脚本と作画の記念作品となったメタリックルージュ。
脚本に関しては起用したスタッフの力量による部分があったとしても、定評のある作画においても凡百アニメ(またはそれ以下)のようなクオリティを連発していて本当に悲しかった。
「制作・BONES」を見れば少なくとも他のどんなアニメよりは興味が湧いていたし、作画も期待できた。
その「とっかかり」があって「ひそねとまそたん」「ゴジラS.P」といった素晴らしいアニメと出会えた。
それもこれも、私が小学生の時に土曜日の朝7時半から放送していた「交響詩篇エウレカセブン」が全ての始まり。本当に全てだった。
私のセンスの土台も、趣味嗜好の土台も。本当に何から何まで衝撃だったアニメが交響詩篇エウレカセブン。
阿呆の小学生だったのでストーリーを把握することは出来ていなかったが、少年ジャンプ的な「努力・勝利」ではなく、様々な文化・宗教・人種が入り乱れる世界の不条理に空中サーフィンで抗う主人公たちのドラマに心を躍らせた。今でも新鮮に感動を覚えられるほど大好きな作品。
そんなスタジオが脈々と繋いできた素晴らしい作品の流れを確かに断ち切った作品が今回の「メタリックルージュ」
作画は本当に酷いクオリティなので割愛する。
人件費とかいろいろ難しい時代かもしれないけど、クオリティで頑張って欲しいよBONESには。
「時代」「人件費」を言い訳にして作品のクオリティを犠牲にするスタジオじゃないと信じたいから酷い作画には何か原因があったと信じたい。
思いつくとするなら、ロボアクションを手描きにしたから作画コストが高くついたとか?
手描きロボアクションをしたいから~~~と意思があったとしても、そこを「売り」に出来なければ意味が無いし、作品の品質低下に寄与しているので悪影響しかない。
じゃあ手描き作画に拘りたかったのか、と言うと終盤ではCGモデル使っててもう分からん。
手描きに拘りたかった訳でなく、CGアニメを使いたくなかった訳でもない。
むしろ最終話のCGアニメは、CGモデルも動きも良かったから最初から手描きロボアクションのコストをそちらに回せば良かったのではとモヤモヤが残る。
結局作画のクオリティもしっかり言及してしまった。
しかしメタリックルージュに一番の悪影響を与えていたのは脚本。
もう、本当に何がしたいか分からなかった。
人間とネアン(アンドロイド)の関係(人間はネアンをほぼ奴隷として抑圧している)を見せつけたから
「これはネアンが蜂起して権利を掴むまでの物語か」
と感じさせながら、ネアンの人権問題を主人公のネアンキャラ一人だけが抱えている意思決定問題であるかのように見せる矮小化を行い、すぐさまのそのネアンキャラの出自問題へと展開しさらに人権問題は無かったことに。
さらには2話で用語だけ出てきた「宇宙人」が10話で出現したり、2話でちょろっと出てきて助けてくれてから音沙汰も無かったネアンが9話付近で主要キャラであることが判明したり……
脚本が本当に雑!!!!!
何を見せたい物語か12話を見ても分からなかった。
以下でストーリーで提示された問題に対する回答のまとめ。
ネアンが立ち上がる物語か?→ネアンの人権問題および意思決定を主人公ネアンの個人的な問題へ落とし込みました。
人間がネアンを奴隷化する現状維持、ネアンの武力蜂起によってカオスを巻き起こしながら平等を目指すどちらを肯定するか?→人間のネアンに対する奴隷化・暴力について無批判なまま、ネアンの武力蜂起のみを否定して主人公ネアンが人間側につくことで問題解決としました
主人公ネアンの意思は製造側の人間が介在しているから意思決定は手元にないのでは?→人間から最初に与えられたチョコがずっと大好きで、今でもチョコが食べたいと思っているから、個人的意思決定は手元にあるとします
半グレ刑事が部下ネアンをボロクソ言ってましたが部下ネアンが凶弾に倒れたところで部下ネアンを大事に思っていることが分かりました=人間がネアンを奴隷化している現状でも人間とネアンは分かり合えることを物語で提示しました→していません(全ギレ)
2話でチョイ役だった記者がネアン武装蜂起団(4人くらい)のリーダーであることが6話あたりで判明したら視聴者驚くだろうな→驚きません
2話でチョイ役だった人物が実はネアンで、アンチ武装蜂起集団であることが9話くらいで判明したら視聴者驚くだろうな→面白くないです
冒頭から死んでいたとされていた人物が黒幕だったら面白いだろうなぁ→思い入れなさすぎて何も面白くなくて逆にすごく笑った
2話で用語だけ出てきた宇宙人が今でも世界の支配に君臨していることが10話あたりで判明したら……→面白くないです
適当に主人公を女性二人にしてシスターフッド感出したらウケるんでしょ→シスターフッドを雰囲気でやってるだけで意味を知っていない
視聴者の目を惹こうとする引き出しが「ちょっと見せた(聞かせた)人物が伏線だった」しかないお粗末な脚本。
奴隷も絡むシリアスな人権問題をとりあげておきならがら、そこに真正面から取り組む気が無い。
それどころか、その問題を個人的な問題として矮小化する始末。
社会派アニメを気取ったつもりだろうが、ただ単に主要スタッフの現代における時代錯誤なアンチリベラリズムを見せただけ。
現代社会が抱える問題を時代錯誤な価値観で否定する低レベルな行為。
あらゆる問題を抱えながら最後まで解決しない脚本だった。
本当に酷くて、心底悲しくなるアニメだった。
魔法少女マジカルデストロイヤーズは悲しくならなかった。
でも、大好きなアニメスタジオが記念作品として「メタリックルージュ」を送り出したのが本当に、心底悲しかった。
もう脚本面において実績も無い年増を、年功序列的に「監督」へと起用する悪習はやめないか、アニメ業界。
このままだと本当に日本の主要なアニメスタジオは10年以内に幾つか消えますよ。