人々からの信頼が信頼値となってヒーローの力となる世界。それはすなわち誰もがヒーローになりうる世界。
ワンピースの放送時間に乗り込んだリ・ハオリンによる英雄譚は、目の前で自殺した本物に代わってヒーローをすることになる男、幸運を呼ぶ少女、ヒーローショウから魂を昇華させた男、助けたい一心の犬、物言わぬ父など、多くのヒーローたちのオムニバスとしての一面と、そうしたヒーローたちが戦うランキング戦の序章にして叙事詩の一面を併せ持っていた。
監督作品で常に何か映像的な面白さを突っ込んでくるリ・ハオリンは、本作の冒頭にあたるナイス編ではNetflixアニメのアーケインに近い3Dルックで挑み、徐々にセルルック2Dに移行していく。そうしていわゆる普通のアニメに見え始めた終盤、ランキング1位のヒーローXの能力が二次元と三次元を行き来する、というアニメーションの手法そのものを作品に持ち込む驚きのものであったことがわかる。両者を行き来しながら敵をいなし続ける最終話の表現は、スパイダーバースなんかも挑戦しうるものに挑んだことであり、これを大いに評価したい。まじで一軒の価値はあると思う。