このレビューはネタバレを含みます
連載開始当時からの原作ファン。いつアニメ化するだろうと首を長くして数年、とうとう叶ったアニメ放送は、原作の良さが十分に引き出された大満足のクオリティであった。
試合シーンの画面作りが何より素晴らしい。キャラの一挙一動が非常にダイナミックかつ生き生きと描かれており、アクロバティックなカメラワークも相まって非常に大迫力なプレイを目で楽しむことができた。
藤堂・千早の背番号回は特に気合が入っていた。トラウマ回想シーンでは作画はもちろんのこと、音楽や美術、声優の芝居全ての相乗効果で息苦しさや焦燥感が演出されていたからこそ、都立に入って救われたというカタルシス効果が凄まじい。
原作と比べ、アニメの方が迫力に欠けるシーンもいくつかあった。とはいえそれはアニメが劣っているというわけではなく、原作が漫画という媒体をフルに活用して表現を尖らせている作品だからであろう。漫画ではできない色や音楽、動画などで描写の工夫をしている点は高く評価でき、原作の表現とアニメの表現とで優劣をつけられるものではない。
野球もギャグもサスペンスも、あらゆる要素がバランスよく配置された作品。イップスや体格差、無責任な指導者や道具にかかる金額や応援の意味など、高校野球をテーマにした作品の中でも斬新な切り口で展開を描いていく本作。願わくば、このクオリティのアニメで続きを見てみたいものだ。