己の信念を曲げずに貫き通すロックを体現したガールズバンドのオリジナル作品。
映像面ではまず3DCGによる作画とは異なる質感・動きのアニメーションが目を引く。表情豊かで感情的な仁菜のキャラクター性とマッチしている。また、ライブシーンになれば、現実や作画では難しいメンバーを回り込むカメラワークに活かされる。ライブハウスや野外と各会場のキャパに合った映像演出やカメラワークになっているのも細かい。
音楽は言葉数・手数の多いメロディアスでマイナー調なロックサウンドの楽曲が中心。普段抱える鬱憤を昇華するようなエモーショナルな曲調。それでいて現代のロックシーンにも受け入れられるような印象を受けた。
物語はプロのロックバンドとして生きていくことのリアリティを追求したもので、音楽活動そのもの以外の家族との関係や金銭のやりくりの描写もあるのが特徴。各メンバーがバンドを組むから抱えてきた過去を清算し、ときにメンバー同士で本音をぶつけ合いながら成長していく。そして、苦難もありながらフェス出演やメジャーデビューも果たすが、バンド観点では絶望的な終わりを迎える。それでもラストの各メンバーの吹っ切れた笑顔の表情と「ありがとう」の言葉からは後悔はないのだと分かる。貫き通した信念の表れ。
舞台は川崎を中心に現実に登場する場所やライブ会場を登場させており実在感が生まれる。また、放送に合わせてBAYCAMPに現実のトゲナシトゲアリが出演決定するなどアニメと現実でリンクしプロモーションとしても動線が引かれた仕組みに。
最後にガールズバンドのアニメとなると自然と『ぼっち・ざ・ろっく!』の存在が浮かぶが、上記のように各要素で差別化が図れていた。
お気に入り話数:5、8、10
プロジェクトの公開当初は3DCGか...となってしまったが、蓋を開けてみれば最高のバンドアニメだった。
10年後も生き残ってくれ。