ド傑作。感性を掻き鳴らすような楽曲の水準は軒並み高く、感情を突き通すこと/納得を勝ち取ることを軸とする青き物語も痛快無比。3DCGとしての感傷的な表現も伸び伸びとベストを更新し続けるエピソードも見事。話は5、7、9、11話が楽曲は爆ぜて咲く.声なき魚が好き。
本作が傑作であることの理由として語り部である井芹仁菜の魅力が大きい。
生意気で、気難しく、面倒臭くて、一度決めたら納得するまで自分を突き通す愚直な姿勢。それが物語に小さくない波紋を産み、停滞していた彼女達の歩みを大きく動かすという構造は王道なようで、それが綺麗事としては処理されず青臭い突っ走りとして自覚的に描かれる塩梅も好みの味だった。
仁菜の周辺人物─トゲナシトゲアリの面子もまた人並みに懊悩を抱えており、そのフラストレーションが音楽を通してカタルシスとして発揮されるドラマの適切な構築と見せ場を損なわない脚本の器用さ。
端から端まで抜かりがない。
その歌を、その瞬間にこそ歌う意味がある。
そういうドラマとして”ちゃんとする”ことは簡単ではないし、これを一切損なわずに1クール走りきるのは凄いことだ。人間と人間が集まれば様々な問題が起きるが、そこから逃げずに、大小問わずの感情の衝突があちこちで起こる展開も豊富だ。
国内の3DCGアニメ作品としても最高水準の完成度で、三次元的な人物の表情の変化や身体の駆動が物語に込められた感情の推量を取り零さずに括約させている。インパクトのあるカメラワークもこの形式だからこそ成立しており、ライブの没入体験として相応しい造りなのも最高だ。いや、本当に凄いと思う。時代の最先端を走るアニメとして風格がある。