さいころ

響け!ユーフォニアム3のさいころのレビュー・感想・評価

響け!ユーフォニアム3(2024年製作のアニメ)
4.0
個人的に1ー2期が一番好きだったから、点数差をつけるためにこうした。原作を読んでいないため、改変があったとわからなかった。

ただアニメ版もよい決着のつけ方だと思う。黄前と高坂が並び立つ姿もみたかったが、1期から「中学時代の高坂のように悔しくて死にそう」という気持ちの共有が重要だったので、黄前がそこに到達した感があった。

あと黄前も高坂も、それぞれ「依存関係」があり、ストーリー上、どうにかしたいという感じがあった。高坂の選択(成長に必要な決別、そして黄前の「姿がみえないように」という覚悟に対する返答)がキャラクターの成長としても効果的に感じた。将来的に黄前は悔しさを知る教師として、高坂は自分の気持ちに振り回されない奏者として活躍できるだろうなと想像できる。

キャラクターとしては、奏と滝が魅力的だった。奏はずっと味方だから、そりゃ好感度ばく上がりですよ。滝は1も2も絶対的な指導者だったので、選択に迷いが生まれることで、人間的な一面がみられた。

部員に軋轢が生まれた際、「みんな1年の頃を知らない」という言葉があったが、視聴者はみな1年の頃を知る者なので、滝に強い疑問を呈せない。黄前と滝が一緒に悩み続けることで、絶対的な指導者も一人の人間なのだと知らしめた気がする。そして、黄前が「姿がみえないように」と提案して、教師の想像を超えた子どもの成長を通じて、滝も成長していく(「賽の河原で石を積むようなこと」という表現は相当な苦悩を感じる)。正直、全国金賞は、学生だけでなく、教師側の成長もあって達成できたと感じる。

黒江は黄前を倒すわけだけど、ちょっと造形不足感は否めない。黄前の進路に対する優柔不断を敗北理由にしてるんだけど、それでも黒江が悪役になってしまった(演出も不気味さを醸すし)。奏の「何度も本人に相談します?」は本当にその通りなんだ。一方で、黒江の追い込まれた過去を考えると、何度も本人に相談しなきゃいけない(無駄な行為で、精神逆なでする行為だけど、癖になってるんだろう)。もう少しキャラクター像を掘り下げられれば、憎まれ役にならなかったんじゃないかと思った。まぁ負かすから無理かな。高坂も黄前の演奏の問題を指摘してるから負けフラグは立ててたし、それで脚本としての説明責任は果たしてたのかな。どうだろ。でも、黄前は黒江の脅威にもう少し敏感であるべきだった気がする。「同列の能力」であるならば、黒江の能力に気づくべきかな。

ただ、黒江の人生は好転するよ。演奏している、嘘のない自分を認めてくれる空間がなくて苦しんでたんだから。めちゃめちゃ高校を良き思い出にしそう。

黄前は塚本と付き合うみたいだけど、基本的に黄前は塚本の前で愚痴を言えてたからいいコンビだね。まぁ塚本は尻に敷かれるだろうけど。

12話がピーク過ぎて最終話は、緊張感が少し乏しいような気がした。うーん、物語のピークと、全国大会のピークにズレがあったのかな。尺があれば、緊張感を高めた演奏と、しんみりとした回想を分けた可能性もあったのかな。

あー、終わっちゃったな、という寂しさあるな。たぶん小説を読むと思う。原作読者の反応をみると、改変によるズレを吸収できてないのではないか?という思いもあるから。

追記
――真由は、久美子の将来や進路を決定づけた存在でもありますよね。
石原 そうですね。原作だと、久美子は最後まで真由を攻略しきれていないのですが、アニメでは敬意をもってお互いを認め合えるような関係に落とし込めるよう、最後の展開は原作から変更しているんです。
https://febri.jp/topics/anime-eupho3_ishiharatatsuya_01/
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