このレビューはネタバレを含みます
もう少し話数があれば、濃密に物語を描くことができたと思うが、これまでのユーフォを踏まえると1クールで収めるのが最適解のようにも思える。
原作にはないアニメ版ユーフォの設定を引き継いだ上で、物語を妥当な形で改変し、新たな魅力を付与することに挑戦した制作陣に感謝。原作改変が広く議論される以前から決まっていたことではあると思うが、作品に対するリスペクトの姿勢や作品を別のメディアに変換する際の意義を考える上で大事なことが詰まっている。
久美子や麗奈のキャラデザも第1期から微妙に変化しており、3年間の彼女たちの成長が見られるようで嬉しくなった。また、『ヴィオレット・エヴァーガーデン』で見られたような髪1本単位の作画も際立っており、大吉山の場面は息を呑むほど美しかった。宇治の風景も実際の宇治そのままで、見ているだけで心が洗われる。
演奏シーンが少ないことは少し残念ではあるが、部長になった久美子の視点に立つとそれも自然なことではないかという結論に至った。「オーディション方式の変更」や「久美子と同等の実力を持つ真由の入部」など、物語に波乱を巻き起こす要素から生まれるリアルな物語の説得力は、ユーフォがユーフォたる所以ではないかと思った。久美子や麗奈の個人としての本音と部長としての本音の描写が大吉山で吐露される場面は、ユーフォという作品の印象が180度変化するほどの衝撃があった。その後の最終話で彼女たちが演奏している場面を見ていると、自然と涙がこぼれた。彼女たちの3年間の集大成、京アニの真骨頂をリアルタイムで見ることができたことは幸せというほかない。