郵便機

T・Pぼんの郵便機のレビュー・感想・評価

T・Pぼん(2024年製作のアニメ)
3.0
画風はドラえもん、内容はまんが世界の歴史、ただし目線はそこそこアダルト
〜beforeバック・トゥ・ザ・フューチャー作品はタイムマシン不文律縛りがきつい〜

作品評価:3.0
ハマり度:2.9(前半3.0、後半2.8)
平均評価:3.0
視聴コスパ:2時間映画6本分に相当
(1話平均30分×12話×2シーズン)

ぱっとみ、ドラえもん系列の作品にみえるから(ある意味そうだけど)視聴年齢のレイティングNRで、夏休みに子供らと一緒にみようと思われた方も多いかもしれないが、本作のレイティングは+16。

血がドバッとでたり、首ちょんぱありの、魔女裁判でえぐい拷問からの強制自白描写があったり、主人公ぼんの初期メンターである"リーム"という女の子のコスチュームが、昭和のお父さんらを虜にした"OH!モーレツ"というCMのいでたちにくりそつだったりと、そこそこアダルトテイストなのでご留意を😳

アニメではあるけれど、こちらも大人目線で。

- タイムパトロールの理念がわからん(*_*)

「航時法全書」という六法全書みたいなものがある。
基本的にはブラックリスト方式で、 
 ○○してはダメ
 □□してはダメ
といった、タイムパトロールの行動規範がNGリストとして書かれている。
航時法の一丁目一番地は「過去を変えてはダメ」
特に歴史上の偉人などに安易に関わると、例えば偉人を助けたりすると、その後の歴史が変わるのでNGだと。
逆に歴史に影響を与えないような人なら助けていい。
なので、基本的にタイムパトロールは歴史に影響を与えない、過去の平凡な人を助けるのが主な仕事になる。

・・・そんなタイムパトロール・・・必要ある?(笑)

主人公ぼんにふってくるパトロールミッションは、いろんな時代のいろんな場所の、そしてこれが肝心なのだけど、"ほぼ一人を助ける"。
本当はたくさんの人を助けたいが、それすると歴史が変わるのでダメだと。
ぼんも最初はそこを悩むのだけど、それがタイムパトロールの仕事だといわれ続け、しだいにあきらめに変わる。
ぼん自らの口から「自分らがやってることは宝くじに当たるようなものだ」と言わせてしまうようになる。

しもじもの者にそう言わせてしまう、タイムパトロールの上層部はいっさい出てこない。
まいどまいど、教官らしき人物が「ぼん、仕事だ」と仕事の趣旨や意義も伝えずタイムパトロールの仕事を伝えるだけ。
昭和的というか、そういう上司はNG。
個々のミッションは、どのような人たちによって、どのような決裁を経て下されたのか、シーズン通して、ついぞ明らかにされることはなかった。
せめて、決裁の場の議事録でも公開して欲しい(笑)
もちろん助けること自体に異論はないのだけど、なんでこの人助ける必要があるの?という説得力のある理由が欲しい。
それが歴史を変えることにならない人だったら、なおさらだ(まさかルーレット回して決めてたりして?💦)

ちなみに、ぼんとは違う別の部署があり、そちらはタイムワープを悪用する奴らを取り締まる部署だそうで、なんかそっちの仕事のほうが、パトロールの意義も理解するし、もっと話が面白くなったかもしれない。
※昔みた、ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演の映画「タイムコップ」がそんな話だったような記憶。

- 本作のタイムパラドックス

最近、映画「プリデスティネーション」のレビューで、タイムパラドックスの思考実験というのをやってみた。
本作でもちょっと気になるところがあったので整理したい。
ある時代にぼんたちがワープした際の場面で、「やっても無駄!」みたいな言葉がどこからともなく聞こえてくる。結局、それは未来のぼん自身からの声だったのだ。

これ、言葉のみの説明だとわかりにくいので、わかりやすいように番号を振って解説したい。

ワープ1 ぼんたち1回目のワープ
[いる人]
・ぼんたち(1)

ワープ2 ぼんたち2回目のワープ
[いる人]
・ぼんたち(1)
・ぼんたち(2)

ワープ2において、ぼんたち(2)が、ぼんたち(1)の行動が無駄であることをアドバイスするため、「やっても無駄!」と声をかける。
ワープ2のぼんたち(1)は、「声の主は誰?」ってなる。

本作のおかしな点)
1. ワープ1(初回ワープ)のぼんたち(1)が、自分らの声を聞くシーン
1回目なので声をかける自分らは、まだそこにいないはずなので、声を聞くことは不可能

2.ワープ2(2回目ワープ)のぼんたち(2)が、「やっても無駄だよ!」とぼんたち(1)に声をかけた時、「ああ、あの時の声は自分らだったんだ」と気付くシーン
これも同様で、声をかけたのはワープ2が初めてであって、ワープ1(初回ワープ)では声を聞くことは不可能なので、その記憶自体があることがおかしい。

あるとすれば、ワープ2のぼんたち(1)が2回目のループをおこなった際に起こり得る事象展開であるが、そうなると、ワープ1のぼんたち(1)、先行するワープ2のぼんたち(2)はどうなるのかという疑問が残る。

ワープ1のぼんたち(1)が主であったのに、いつの間にかワープ2のぼんたち(1)が主になってしまっている。
自分はこのようなパラドックスを、「主客転倒型のパラドックス」と名付けている🤔

- ドラえもん便利グッズは健在

・圧縮学習
本をタイムマシンにがっさりぶっこんで、後はケーブルを額につけるだけ。本の内容がすべて瞬時にして頭にインプットされる(学生には垂涎のアイテム)
そういえば昔、サンダーバードのようなマリオネット(人形劇)で、「ジョー90」というのがあった。少年の工作員が、銃の撃ち方、飛行機の乗り方など、個々のミッションに必要な情報を事前学習し、敵地に潜入する。学習方法はジャングルジムみたいな装置。入るとぐるぐる回りだす。

・タイムロック(からの巻き戻しスローモーション)
ステッキをふると時間が止まる。ふると時間がふたたび動き出す。ピンポイントでそこだけ時間をスローモーションにできる。そこだけ時間をさかのぼらせる。
このアイテム一つあれば、基本すべての事件解決できんじゃんと思った😳

- 知識欲をくすぐる世界の歴史は楽しめるが、タイムマシンものとしてみるとちょっと。。。

恐らく原作漫画はタイムマシン不文律(過去を変えたら未来が変わるからダメ)の呪縛から抜けきれてない時代の産物だろう。

バック・トゥ・ザ・フューチャーが、過去を変えたら未来が変わるのなら、迷わず変えましょうよという、おきて破りのアメリカンな思想を持ち込んだのは、もうちょっと後になる。

また、登場人物の広がりがないのも痛い。

アメーバみたいな口のへらない浮遊生物がいるのだけど、特段キーとなって活躍する場面がない。これだけ話数があるのなら、そいつ単体の主役の物語があってもよさそうなのに、ほんとにおまけキャラで終わってしまった。

また、ぼんの友人たちを過去に連れて行く話もなく、タイムパトロール筋との絡みもなく、シーズン1は、ぼんとリーム、シーズン2はぼんと女の子の二人中心の世界の歴史ガイドブックにとどまった。

そのあたりの単調さが、ハマり度を低くした。

多くの平凡が世界を支えてきたというテーマらしいセリフがぼんから出てくるのだが、それもなんかこう、うそぶくようにしか聞こえなかった。

- 過去を変えられないのであれば、過去の延長に現在があるとわかるような物語が欲しい

歴史の教訓のエッセンスを学校の物語に活かすなど、現在と過去を対比させるような構造にすれば、より物語に深みが出たかもしれない。
(例えば魔女狩りを現代の学園に置き換えて、並列で物語を進行させるとか)
大人目線の話なので、それもありかと思うしだい。
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