このレビューはネタバレを含みます
序盤は非常にほんわか寄りのテイストだが、回が進むごとに身内を失った後悔や恐れが顔を出してくる(怪異による自我の喪失も交通事故と同様に隣り合わせの世界であることや、寿命の違いによる別離がシビアたらしめている)。
いろんな生物がいることが許容されている世界で、当然のように同性カップルもいることを描写してるのが(ハーゲンのツレが結婚前に同性カップルで別れてた描写などあり)居心地よい。
ひょうひょうとして柔和でありながら、つらい過去があって胸の内を開示しないようにしているジローと、世界を知り始める純粋なぶちおがとても魅力的で良かった。声がしっくりくるのも嬉しい。
後半は重たく陰りのあるエピソードが中心で、クライマックスにおいては、異世界に引き込まれた人間の記憶が『鬼』と呼称していた天狗たちの言霊により文字通り鬼となって人間を襲うというパニック映画的な鬱展開に。
ほのぼのハートフル物だと思って視聴するとクライマックスの鬱展開がメンタルに影響するので、起伏の少ないおかゆ作品を求めている人は注意したほうがいいかも。(夏目友人帳のほのぼの回やぎんぎつね系統の雰囲気を想像していたら魔法使いの嫁寄りのシビアさだった)
犠牲になった人や救えなかった後悔の描写は災害に似ていて、どうにもならない物事がある点は現実世界に近い質感がある。これが他の異種交流日常作品とはまた違ったテイストにしている。
作者が表現したかったテーマは異種間の交流よりも、そういった人生における喪失を直視してそれでも生きていくことなのかもしれないなと思った。