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機動戦士ガンダム 復讐のレクイエムのkigumaのレビュー・感想・評価

3.2
ロメオ監督の「ゾンビ」と似た展開のロードムービー。
怪物から逃れ、たどり着いた仮の宿も失い、海を超えて逃れようとする人々。
旧約聖書から続く物語の雛形。
ガンダム世界の良い意味での緩さ、懐の広さを感じる。
この作品、ウクライナや中東の戦争がない世界線で鑑賞したら、ここまで生々しく感じることはなかったかもしれない。

しかし、登場人物のセリフや行動になにか空虚さを感じてしまい、共感までいかなかった。心が言わせた台詞ではなく、脚本家が言わせた台詞に聞こえてしまう。DEIイデオロギー作品によくある空気感。生きた人間の肌触りがない。

監督は08小隊とサンダーボルトをイメージしたとのこと。しかしサンダーボルトの当時人物は真逆だ。憎しみ、怒り、恐怖を剥き出しにする。人類の半数を死滅させた絶滅戦争だ。それは当然だろう。

「理想」から逆算されたキャラには人間の幅がない。しかしひとが物語を必要とするのは、教義が欲しいのではなく、渾沌の中で足掻くひとの営みに共感するからだ。「多様性」が「多様さ」を殺す一神教の皮肉。

人々がSHOGUN、ゲームオブスローンズに熱狂したのも解釈の多様性があったからだろう。

ガンダム作品としての映像が素晴らしかっただけに、ものがたりとしての弱さが残念だった。
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