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小市民シリーズ 第1期のsatoshiのレビュー・感想・評価

小市民シリーズ 第1期(2024年製作のアニメ)
4.3
面白かった。同じ作者の「氷菓」とは対照的な作品だった。「氷菓」は「灰色の高校生活」を望む折木奉太郎が、千反田えるの「私、気になります!」に振り回されることで謎を解いていくストーリーで、そこに京アニの演出力と芝居の豊かさが加わっていた。

翻って、本作の主人公、小鳩常五朗はIfの折木奉太郎とでもいうべき存在で、でしゃばって謎を解いた結果、苦い経験をした過去を持っている。ヒロインの小山内ゆきも別ベクトルのヤベー奴で、共に過去の反省から「小市民」として生きることを目指している。「氷菓」が王道ならば、本作はそのB面なのである。演出もそれを意識してか、対照的だ。「氷菓」のようなアニメ的な面白さに満ちたものではなく、寧ろ徹底的にそれを削ぎ落としている。会話劇を淡々と、しかし、カットの切り替え方や、印象的な背景チェンジ、そしてバチバチに決まっているシネスコ画面などでアクセントを付け描く。「実写的」なアニメの演出だった。

しかし、描いていることは根底では共通していて、「思春期の全能感」なのだろうと思う。「氷菓」は奉太郎がそれを知っていく過程であり、本作は「自覚した後」の物語であるという点は違うが、それぞれの違った視点から描こうとしているのだと思う。

また、ミステリ的にも、ヒントの提示の仕方がちゃんとフェアなものになっている。全体的に頭の体操感があったけど、提示されたヒントを一つひとつ検証してロジカルに推理を組み立てていく下りはとても面白かった。
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