このレビューはネタバレを含みます
ターミネーター0
何も見えない暗雲の中でただ一つはっきりしているのは、虹を求めるのであれば嵐に耐えなければならない。
初代ターミネーターの最後でリンダハミルトン演じるサラコナーがジョンコナー懐妊後、一人で砂漠に向かうガソリンスタンドで「嵐が来る」のオマージュが最後にある。
全8話の中で過去作に意識しすぎたオマージュがある。
自分の好きなターミネーターシリーズは初代のサラコナーのような男に頼らない強い女性という日本で男女雇用機会均等法制定に向けて女性の地位が国際条約で向上する80年代に先駆けられており、同作のジェームズキャメロン監督作品ではタイタニックなど、男性の死亡後に力強い女性を描く走りがターミネーターだろう。
本作でも2022年から1997年の東京に一人の抵抗軍の女性戦士エイコが送られる。その東京では明らかなシンギュラリティが起こっており、物事の革新に迫るスカイネットに対抗する手段としての人工知能ココロの存在がある。スカイネットとターミネーターは、このココロと2045年から来たエイコの子=マルコムリーを殺す為に訪れる。2045年にマルコムが作った人工知能ミサミによるスカイネット組織を巡る戦いの中、子を産んだ記憶のないエイコはマルコムが自分の子だという衝撃の結末を迎えながら、人工知能によりターミネーターは制圧され破壊される。人工知能は人類を信頼した最後となっている。
過去とは新しい現在。過去に戻って未来の抵抗軍リーダーが産まれる前に母親を殺しても実質無意味であり、過去とはすなわち新しい現在でしかないというパラドックスはターミネーター「らしさ」を感じざるを得ない。
ただ登場人物が女性に黒人などポリコレ満載で駄作としか言えず、本当に描きたいものがこんなチープでよいのかと思いながらターミネーターを冠するには非常にお粗末だった。
AI時代に向けて果たして彼らは友好的なパートナーになり得るのか。ターミネーターという性悪説とココロという性善説を問いかける奇妙な作品だった。無機質な機器を相手に本当に性善説が通じるのかと疑問を抱くには十分すぎる作品だった。