ヨーク

Tokyo Overrideのヨークのレビュー・感想・評価

Tokyo Override(2024年製作のアニメ)
3.5
近未来ディストピアSFとしては結構面白かった。何よりも近未来で「交通」というモチーフを取り扱った作品はあまり他に知らないのでそこは新鮮に楽しめましたね。
全ての移動手段が自動化されてAIに管理されているので信号機なんかは骨董品となった時代が舞台で、東京の物流も人の流れも全てが無事故無違反で滞りなく進む社会が実現されているのだが、その反面全ての物や人間の位置情報は管理側に筒抜けになっていて自由という概念が危機になっている世界で自動運転に頼らずに人力で表では扱えない配達業を営んでいる者たちが主人公の物語。彼らが麻薬の売買に絡んだ事件に巻き込まれていくという感じですな。
繰り返しになるが交通というモチーフは面白いし、その舞台となる未来の東京のビジュアルも特に淡い色彩がよくて(近未来ディストピア感があっていい)面白いのだが、それらが単なる背景としか感じられずに街の生っぽさが全然感じられなかったのはイマイチだったな。ま、そこはある程度は狙っていたのだろうが描写されるモブたちがみんなして人形みたいな感じだったのは面白くなかった。レース回で出てきた女性レーサーみたいに生身で運転することにこだわる人もいるんだろうし、もうちょい背景にも有人運転の車とかバイクがあっても良かったと思うんですよね。ルンバみたいなのに乗って移動してる人たちの風景はそれっぽくていいんだけど忘れ物に気付いて思わず自分の足で来た道を駆け戻る人の姿とかあってもいいんじゃないかなとは思った。交通は全自動化されても思わぬ人間側のミスやアクシデントで急なスケジュール変更というのはあるだろうし、そういうときってシステムとしての交通はともかく人間自身は慌てると思うんですよね。そういう遊びの部分というか、余白の部分をもっと見たかったな。
まぁでも完璧に管理されてる世界ってのがお題目としてあるからそういう生っぽさは削ったんだろうけど、俺はあった方がいいと思いましたね。終盤のSF的にもどういう説明が付くのか分からない描写とかはまぁご愛敬だろうか。まぁ深く考えずに見れば可もなく不可もなくな感じでしたが…。
ちょっと詰めが甘いなぁと思うところもあったけど、ラストシーンで主人公の友達(如何にもガキっぽく思慮の浅い人物で好きだった)が高速道路を見上げたら内燃機関のエンジン音が聞こえてくるという締め方は好きだったので、まぁ終わり良ければ的な感じでしたね。バイク好きな人ならもっとグッとくるんだろうなと思う。全6話でサクっとみられるのもヨシかな。
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