このレビューはネタバレを含みます
まず、opにサカナクションedにヨルシカという抜かりない構成が素晴らしい。
物語は、獲得した知に満足することなく、自らの人生において純粋に、徹底的に、献身的に真理を追究した者たちの奇跡といえる。人生を賭して、自らが獲得した知に殉ずる覚悟を見事に描いている。命題「チ。」は「地動説」と「知(真理)」に加え、命よりも自らの真理を貫くことを優先した者たちが流した「血」の意味も込められている。史実では、ガリレオは宗教裁判で自己の学説を撤回したが、ブルーノは撤回せず殉教者としての死を選んだ。この両者の違いは、科学的な知と真理への態度の違いではないだろか。
科学的な知はその成立に普遍的妥当性を要する。普遍的妥当性を得るには観察、実験、検証によって正しさを証明しなければならない。その正しさの証明はガリレオ本人である必要はなく、自身無しにも成立する。証明可能な正しさのために死のうとするのは無意味だろう。
一方、ブルーノは哲学的な真理を貫いたのである。ブルーノが獲得した真理は自身と一体となってのみ存在する。それは、自身が真理を求め理性と共に生きた歴史的な現象である。よって普遍的妥当性はないが無制約的である。つまるところ、それを前にして証明それ以外に選択の余地がなく、無条件にそれを選ばなければならない、自分にとっては避けることのできない要求である。
それが、たとえ茨の道であっても、自らの確信した真実に向かい進み続ける。その覚悟をみた。知を愛する全ての人へ。
先生、俺死にたいんですよ