このレビューはネタバレを含みます
「チ。」は「地」であり「血」でもあり「知」でもある。地動説に命を賭けた人達の話。
以前に漫画を読んだ時は結末にモヤモヤし理解できない部分があったが、アニメで鑑賞したらスッと理解して腑に落ちた。そして感動した。ストーリーは同じだし原作と特別変わったところはないのに、2回目の内容だからなのか。
オープニングの怪獣がとても良い。オープニングの映像が主人公と共に変わるところも良かった。
一章から三章と最終章をどのように解釈するかは人それぞれだろう。P国とポーランドはパラレルワールドでそれぞれ別の世界とラファウがいると解釈することもできるけれど、私はP国もポーランドも同じ世界線だと思っている。
P国の話は歴史に残らなかった、あったかもしれない部分、ポーランドは歴史に残った部分ということで。
P国での地動説の迫害は、アントニ父の個人的なものであり、歴史に残る資料には何も残っておらず少し違う地域に行けば、あの様な弾圧を受けることもないことが示唆された三章があるため、何の矛盾もない。
それにポトツキさんの手紙だけが、パラレルワールドを超えて届くのも違和感あると思う。
大人ラファウは、ラファウの生まれ変わりと解釈しても良いし、ラファウは「好奇心と知に取り憑かれた人」を記号化した存在と考えてもいい。
地動説のためなら、自分自身の命と人生さえ捧げられるということは、知の探求のために時に他者を殺すことさえ厭わない暴力性を持っていることを表現しているのだろう。
方向性は違うけれど、どちらのラファウも知の探求でその身を滅ぼしている…。真理を求めた者が必ずしも正義とは限らないという表現。
最初の方だけ観ると宗教を悪いように書いているようにも写るけれど、そう単純な作品ではない。
地動説のために、主人公たちは皆、死んでしまったのに最後に繋げたのはポトツキさん宛の手紙だけ…。でも「地球の運動について」という題名を聞いたアルベルトが「?」と疑問を持ってくれたおかげで現実の地動説に繋がっていくというこの美しさ。
ノヴァクは、異端者として沢山人を殺したのに、なぜ地動説が異端なのか、禁止されているのかさえまともに説明できない。ただ、上からの命令だから考えずに殺していただけ。自分自身で考えることの重要性も描いている。ノヴァクは愚かな悪人だけど、最後は同情した。私自身、人から言われたから、とあまり考えず行動する時があるタイプなので少し気をつけようという気持ちになったw