ウシュアイア

チ。 ―地球の運動について―のウシュアイアのレビュー・感想・評価

チ。 ―地球の運動について―(2024年製作のアニメ)
4.4
C教が社会規範となっている過去のヨーロッパそっくりの架空の世界(と言っても、剣と魔法の異世界ファンタジーではない)で、命を懸けて地動説を研究したものたちの戦いの物語。


地球以外の天体が地球の周りをまわっているという天動説を前提に天体の運動を解釈し、その理屈に合わない事象が出てくればそこに新たな解釈を加えて天体のの運動の理屈はどんどん複雑なものになっていく。地球が太陽の周りをまわっているという地動説ならば、もっと単純に天体の運動を解釈することができる。だが、宗教的には禁忌の考え方である。宇宙開発などの技術が生まれる前において、地球が太陽の周りをまわっていようが、地球以外の天体が地球の周りをまわっていようが、自分たちの生活にはほとんど影響がない。では、なぜ人は地動説にたどり着くことができたのか。社会規範を越えた真理にたどり着こうとする人間の本質を描いた作品。

歴史作品でも良かったのだろうが、実在の人物を登場させて描いても大なり小なりフィクションが入る。面白くエモくエッセンスを伝えるために完全フィクションにしたのだろう。

登場人物は過去の設定にも関わらず、意識高い系だったり、中二病だったり、狂信者だったり、と現代人のパーソナリティに通じるものがある。人間の本質を描いているわけだから当たり前なんだろう。


会話劇が主体ということもあって、声優陣の熱演が素晴らしい。
OPのサカナクションの「怪獣」の歌詞も作者の作品への解像度の高さを物語っていた。
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