クドゥー

ヴァイオレット・エヴァーガーデンのクドゥーのレビュー・感想・評価

4.5
『今なら少しは解る、愛してるから始まる人生』

心に火傷を負う少女が手紙の代筆を通じ「愛してる」を探す旅に出る京都アニメーション制作作品。心の成長により罪悪感と対峙させられるジレンマの先に待っていたもの。愛を知るまでの最終回ではなく、愛を世界に還元するまでを描く新たな境地。

第1話「「愛してる」と自動手記人形」
→心に見えない火傷を負ってしまったヴァイオレット、エンドロールで初めて作品のテーマを知らされる。彼女を見守る神のような視点でホッジンズが紡いだ、確かな人格を持って届けられる言葉。僕が今までの人生で観てきた中で、最も心を動かされる芝居のひとつ。

第2話「戻って来ない」
→誰かが誰かの気持ちに触れたのならお日様が祝福してくれる。藤田春香さんの絵コンテと演出は、いつも彼女のだって気づかせてくれる。今はまだ相手を通じて自分のことを少しだけ理解する段階、愛おしくも切ない大人の時間はやっぱりエンドロールの後にある。

第3話「あなたが、良き自動手記人形になりますように」
→オープニングもエンディングも彼女の姿だけしか出てこない。それでも掬い取った誰かの心は彼女の中に蓄積されていく、本当に伝えたい相手に伝えることは難しくても。今日という日は良きドールとして羽ばたく最初の記念日。

第4話「君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」
→初めての出張サービスは美しい景色が大したもてなしをしてくれる旅。人の気持ちが分かるようになってきた彼女だからこそ、その複雑さにまだ戸惑ってしまった。「愛してる」とは勇気の要る言葉、拒絶されたらいたくなくなるほどに。

第5話「人を結ぶ手紙を書くのか?」
→かつて宝石のような一瞬をともに過ごして、いつしか本物の恋文を渡し合うようになった男女の話。このまま素敵なショートフィルムのまま終えてほしかったけど、壮絶なシリーズ構成がそれを赦してくれない。見えない火傷が彼女を覆い始めている。

第6話「どこかの星空の下で」
→一生に一度の出会いを彩る一度限りのオーケストラ、彼にとっては永遠でも彼女にとってはほんの一瞬であるかもしれない。あの方を失うぐらいなら私が死んだ方がいいほどの想いに触れても、星空を見れば僕を思い出すのかもしれない。答えは「外伝」の中にある。

第7話「       」
→報われなかった想いを遂げられる度に、彼女は自分の身体が燃えていることを知るが、それを「成長」という言葉で祝福することはできない。彼女が殺めてしまった人たちは、彼女が成長するために生まれてきたわけではないのだから。いつか、きっとが来てしまった。

第8話
→「私は貴方で出来ている」とはよく言ったものだが、運命よりも宿命のような関係性を見ていると、あながち間違ってはいないと思う。その重さに堪えきれなくなり流れる涙とは、なんて切なくも美しいのだろうか。戦火よりも燃え広がる炎からは逃げ回るしかない。

第9話「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
→「してきたことは消せない」という事実と向き合ってきたからこそ「してきたことは消えない」を知ることができる。彼女の結んできた人の想いが彼女に還元される普通のテレビアニメの最終回。その先を描くことにより傑作は最高傑作となる。

第10話「愛する人は ずっと見守っている」
→生まれて初めての手紙をもらって今全く新しい物語が始まったような、今度は彼女が世界に優しさを還元する時間。愛情に満ちた母の第一声が結末を予感させるが、それに対する感動は予測可能性など遥かに超えてくる。命はこの瞬間に生まれる。

第11話「もう、誰も死なせたくない」
→これまで出会った人たちは彼女の名を呼んで、彼女によって変えられた人生に想いを馳せている。届かなくていい手紙はないけれど、駆けつけたのが彼女でなければ死ぬことへの無念さえ伝えられなかった。これが戦争、平和との決定的な隔たり。

第12話
→これが戦争、戦闘の最中に愛する人へ手紙を送ることは出来ない。「守りたかった。」という過去形、手紙で想いが届けられる瞬間がないからこそ、彼女が本質的に変わっていたことが分かる。敵の命を守りながら戦っているその姿は「騎士姫」と呼ぶに相応しく、言葉と行動で示す。

第13話「自動手記人形と「愛してる」」
→戦争は終わった、だけどあの人はもう帰って来ない。心の中で生きていると簡単に言うけれど、生きて生きて生きてその人の優しさを還すことなのだと思う。様々な想いを知る出会いの果てに、彼がくれた「愛してる」は彼女の言葉になった。

Extra Episode「きっと"愛"を知る日が来るのだろう」
→結末を見届けて、外伝を遡って、最後はやっぱり取り零された想いを知る。なぜ歌姫は自分の想いではなくて全ての女性の共感を求めたのか、彼女が書く手紙は相手の心を動かすようになったのか。答えは陽だまりの中にある。

金曜ロードショー特別編集版
→これはまた、京アニ総集編史上屈指の編集。いわゆる「泣けるアニメ」のプロットなので普通なら僕には全然泣けないんだけど、それでも泣けてしまうことに本作のすごさがある。良い意味で極めてテレビ的に彼女の成長を見届けられる。