Pewterspoon

PSYCHO-PASS サイコパスのPewterspoonのレビュー・感想・評価

PSYCHO-PASS サイコパス(2012年製作のアニメ)
4.8
人間のあらゆる感情、思考、心理的健康状態などが測定・監視され、職業や生き方を割り当てる「シビュラシステム」によって社会秩序が保たれる未来の日本において、公安の刑事たちは犯罪傾向を数値化した「犯罪係数」を測定し処罰する「ドミネーター」と呼ばれる装置を使って犯罪者のみならず犯罪者予備軍となる人たちをも取り締まり、治安を保っていた。そんな中頻発する殺人事件の背後に「槙島聖護」なる男が暗躍していた。


話は公安の刑事たちの視点で進んでいくが、「シビュラシステム」によって維持される社会秩序への反逆者である槙島聖護の物語といっていい。槙島聖護は圧倒的な知性とカリスマ性で犯罪者を唆して事件を起こすが、「人は自らの意志に基づいて行動した時のみ、価値を持つ」とし、「様々な人間に秘めたる意志を問いただし、その行いを観察してきた」とし、体制側の刑事たちに、人間性を問いかけるという、圧倒的な説得力をもつ黒幕である。この魅力的なヒールによって回される展開がこの上なく面白かった。

「シビュラシステム」の実態はさておき、学歴、勤務先、クレジットヒストリーやなどで社会信用度がスコア化されたり、金融機関の審査においてもAIが導入されたりと、人間でないものによるシステムが実装された社会が進みつつあり、今は荒唐無稽に思える人もいるかもしれない「シビュラシステム」も、意外と現在の社会の割と近い延長線上にあるのかもしれない。そんな社会における人間性を問う、思考実験的な作品だと思う。

作中でも槙島聖護が言及したジョージ・オーウェルなどのディストピアSFのみならず、今から50年くらい前の筒井康隆の作品でもロボットによって監視・管理される社会が描かれるなど、こうした作品の歴史は長い。AI導入が進む今だからこそ触れておきたい作品。

槙島聖護役の櫻井孝宏さん、狡噛慎也役の関智一さん、名演だった。