にゃん

半径5メートルのにゃんのネタバレレビュー・内容・結末

半径5メートル(2021年製作のドラマ)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

スクープ側ではなく、身近なものを記事にする二折に焦点を当てたドラマ。
ネタ探しの段階から"こうやってネタを見つけているのか"と面白かった。

一般的なイメージのハングリー記者の山辺に対し、相手の事を陥れるような記事には躊躇してしまう優しい風未香。その対比がより分かりやすくストーリー展開していた。

最後、風未香と山辺が別れてしまったのはもったいなかった。山辺は"俺は器が小さいのかな"と自分の事を言っていたが、男の心理は複雑だ。いい仕事をしたら去っていかれた側の風未香が可哀想だった。

ストーリー↓
1
週刊「女性ライフ」編集者の風未香(芳根京子)は、芸能スクープを扱う「一折(いちおり)」班で大失敗し、読者の「半径5メートル」の話題を掘り下げる「二折(におり)」班に異動。名物記者・宝子(永作博美)と出会う。二人は、レトルトおでんを買う主婦を非難してSNSで話題になった「おでんおじさん」のネタを取り上げるが、女性たちの怒りの声を集めようとする風未香に対し、宝子はなぜかコンニャク作りを始める。"おでんを手作りする"という事はどこからする事なのか、それを実証するためである。
当初レトルトおでんにケチをつけたおじさんへの怒りの声を集める予定だったが、"男は泣いちゃダメ" "男は強くいなきゃ"という幼少期からの刷り込みで弱みを見せられない男性の姿に気づく。SNS投稿者の旦那もその1人で、家では添加物や保存料を気にして手作りさせる厳しい夫だったが、実際はリストラされたことを家族に言えずに必死に食事のデリバリー業務を行っていたのだ。
"男だって弱さを見せてもいい"そんな記事を書いたとき風未香は2折で自分が自信をもてる記事を書いていこうとやり甲斐を見つけたのだった。

2
風未香の2折での出発を祝って風未香の家で山辺と飲んでいた。目覚めたら山辺(毎熊克哉)とベッドを共にしていた風未香(芳根京子)。以来、山辺はただ泊まりに来ては朝、会社に行くということを繰り返し、風未香を混乱させる。ある日企画会議で女性用風俗が話題になり、風未香は宝子(永作博美)と共に様々な「出張ホスト」とのデートを体験取材することに。そんな中、デスクの丸山(尾美としのり)は、宝子が取材した利用者の中に妻の絵美(片岡礼子)がいることに気づきがく然とする。妻を問いただすと子宮頚がんを患い心が不安定になり女としての喜びを得られるのは最後かもしれないと利用したのだった。
誰だって誰かに愛されたいし、出張ホストを利用して、自分が誰とどういう繋がりを持ちたいのか分かることもある。

3
風未香(芳根京子)が書いたカリスマミニマリストの記事を読んだ実家の母・祥子(いしのようこ)が物を捨てまくるようになった。長年家族で囲んできたダイニングテーブルまで捨ててしまい、父・和彦(小林隆)は激怒、大喧嘩(げんか)となる。そんな中、宝子(永作博美)は「私はこれを捨てられません」というテーマで記事を書こうと言い出し、絵本作家・いずみようじ(塚本晋也)の家などあちこちに風未香を連れ回す。
物にも色々な感情が刻まれる。断捨離したところでその思いは消えない。特に嫌な感情ほど忘れようとすればする程大きくなる。だからしっかり向き合わなければならないのかもしれない。

4
子どものSNSについて特集することになった風未香(芳根京子)と宝子(永作博美)たち。7年前、トランスジェンダーであることをカミングアウトし離婚した香織(北村有起哉)は、若い女性になりすまして娘の怜奈(上野鈴華)とSNSでつながっていた。怜奈からどうしても会いたいと食い下がられた香織は、風未香に秘密を話し、代わりに会ってくれと頼み込む。だが深夜になっても帰宅しない娘の前に父親の姿で自ら姿を見せることに。

5 (前編)
山辺(毎熊克哉)が特大スクープを取るが、ネタ元の陰謀とわかり窮地に追い込まれる。一方、風未香(芳根京子)は児童養護施設に匿名で寄付をするボランティアたちを取材。調べるうちに、昔クリスマスケーキを施設に配り歩いてヒーロー視されていた巻上(緒形直人)という人物の存在を知る。その頃、宝子(永作博美)はなぜか単独行動が目立ち、編集長の亜希(真飛聖)しか知らない謎の取材を進めていた。

6 (後編)
風未香(芳根京子)は、昔児童養護施設にクリスマスケーキを配り歩いてヒーロー視されていた巻上(緒形直人)という人物が、その後"賞味期限切れの牛乳を使いケーキを作ったものを配っていた"というスクープ記事をきっかけに転落し、記事を書いた記者と不倫報道までされていたことを知る。その問題の記事を書いたのは宝子だった。不倫は事実無根だが、それは賞味期限切れの物を無償で配っていたことを必要以上に叩く記事を書き巻上の人生を狂わせてしまったことへの謝罪、そして改めて弁解する記事を出す代わりに巻上の知り合いの女性が議員からセクハラされている記事を出す打ち合わせをしているところを"不倫"だと撮られたのだった。
宝子(永作博美)も巻上のもとを訪ね、現地で風未香と鉢合わせをする。そして宝子が抱えてきた秘密(上記の記事)を知る。
宝子は10年前の騒動の後一度記者を辞めたことを打ち明ける。人に会いたくなくホテルの清掃員をしていた過去。しかし議員がテレビで"女性の活躍出来る日本に…"と話す姿を見て苛立ちが募り、やり残した"議員によるセクハラ記事"を書く使命感に駆られたのだった。
巻上も今の場所で暮らすようになった経緯を話す。そして宝子と打ち解け例のボイスレコーダーを渡すのだった。
後日過去のセクハラを問題視する記事が宝子によって書かれ議員は追い込まれる。そしてその頃巻上の息子から"会いたい"と連絡が。
それぞれがやっと前へ進めたのだった。

7
風未香(芳根京子)は、山辺(毎熊克哉)がネットで顔や自宅をさらされたために風未香の部屋で引きこもり気味なことが気になっていた。そんな中、ますみ(山田真歩)とともに高名な美術評論家・美砂子(阿川佐和子)の連載エッセイの担当につく。だがますみの9歳の娘・あかり(野澤しおり)の心身が不安定になってしまい、ますみが仕事を休むたび、風未香はそのフォローで四苦八苦する羽目(はめ)となる。

8
ある日、風未香(芳根京子)は宝子(永作博美)と立ち寄った喫茶店で、中学時代の塾の恩師・阿南(須藤理彩)がバイトをしているところに出くわす。阿南のおかげで勉強が好きになったと感謝してきた風未香だったが、実は阿南は就職氷河期世代で、当時もアルバイトの身だったと知る。氷河期世代のおかれた現状が気になった風未香は、SNSで積極的に発信する氷河期世代のインフルエンサー、須川(渡辺真起子)を取材する。

9 最終話
風未香(芳根京子)がかつて熱愛スクープを撮ろうとして失敗した浅田航(倉悠貴)に、新恋人が出来たという報道が流れる。お相手はITベンチャーのやり手社長・興津美咲(西原亜希)。その会社が自治体に納入している子育てアプリを宝子(永作博美)と共に取材する風未香だったが、アプリが不具合を起こしていることがわかると、興津の会社を信用しない山辺(毎熊克哉)と取材方針が対立することに。
アプリの不具合の原因は動作不良ではなく、アプリに入れる内容の審査が厳しく通過待ちという理由であった。

浅田は前の恋人とは別れておらず結婚を発表する段階でいた。興津美咲との関係は同じ養護施設で育っており売れない役者時代にお世話になった姉のような存在であった。
興津美咲のことを元ホステスだの悪女だのと悪く言う記事を出した山辺だったが、風未香は浅田に話を聞きに行き、興津美咲との関係と興津美咲の人柄について聞き本人に会うことを強く望む。そして無理矢理押し掛け取材、"親に育児放棄された過去"を語ってくれてアプリへ対する"子育ての大変さに寄り添えるものを作りたい"という強い思いを聞き、是非とも記事にして世に知らせたいと交渉し承諾を得る。
いい記事が書けた風未香だったが、その記事を山辺に見せると感心した山辺は別れを切り出す。同じテーマを追っていただけに悔しさが拭えなかったのだ。男のプライド。これからもお互いいい仕事をしよう、そう言って山辺は風未香の部屋から出ていった。
目が腫れるほど泣いた風未香だったが、また再びネタ探しに励もうと前を向くのだった。
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