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IT’S A SIN 哀しみの天使たちのFinnのレビュー・感想・評価

IT’S A SIN 哀しみの天使たち(2021年製作のドラマ)
5.0
1980年のロンドン。夢と希望に溢れた青年たちが出会い、ともに成長し、青春を謳歌していた最中、アメリカで謎の病気が流行しているとの噂が…。

80年〜90年代にかけて、HIV/AIDSがじわじわと広がっていく様子、そしてその渦中にいるロンドンの若いゲイたちの生活を真正面から捉えた貴重な作品。
AIDSやLGBTQを扱った他の作品と違ってヒーローもいないし、直接的に啓発するようなストーリーでもない。ただ、この時代を駆け抜けた青年たちのリアルな姿を描いているから逆に胸に迫ってくる。

監督のRussell T Davies自身もこの時代に青春を過ごしたゲイで、この作品は彼自身と彼の友人たちの実生活を投影しているからとてもリアル。
謎の病気に対してのそれぞれのリアクションとか考え方とか、そういうのも全部綺麗事じゃなく「これが現実だったんだろうな」と納得できた。

ゲイやHIV/AIDSへの偏見やShame、Stigma。今よりも何倍も酷く、でもいまだに残ってるのが悲しい。
お母さんが強烈すぎるけど、息子を愛してなかったわけじゃないと思うんだよね…でも受け入れることもできず、あんな悲しいことになってしまった。そういう家庭は多かったんじゃないかと思う。

キャストのみんなのお芝居が素晴らしくて、笑って泣いて大変!特に3話は辛くて辛くて。エンディングで流れるWho wants to live foreverがまた泣かせにきてる。
最終話の橋のシーン、そしてラストのみんなのシーンは号泣でした。

登場人物のジルは実在し(なんと作中のジルのお母さん役で出演!)実際にピンク・パレスに住んでいたそう。
そんなジル本人(Jill Nalder)が最近イギリスで出版した著書"Love from the Pink Palace"をイギリスから取り寄せて読みました。本作に出てくるキャラクターたちが、予想以上に当時実在した人たちにインスパイアされていて、そしてドラマで起こったことが本当に起こっていたのが実感できて感動。ぜひ日本語訳が出版されて欲しいなぁ。

同性同士のベッドシーンを観るのは苦手…という方も多いかもしれないけど、そういうシーンは飛ばしてもいいから、ぜひ沢山の人に観て欲しい!!
コロナ禍の今、特にサル痘を巡る報道とかをまさに経験している今観ると、余計に感じるものがあります。

※スターチャンネルEXで観れます。
※昨年初めて観て、今回改めて観たのでレビュー書き直しました。
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