にゃん

生きるとか死ぬとか父親とかのにゃんのネタバレレビュー・内容・結末

生きるとか死ぬとか父親とか(2021年製作のドラマ)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

ラジオのリスナーの気持ちで見れたドラマ。
吉田羊さんのなんとも安心する雰囲気が好き。
愛人のいた父と今は亡き母と、母が大変な時に自分のことで精一杯だった高校生の頃の自分。
それがベースにあった上で、父と少しずつ(うわべだけでなく)しっかり向き合おうとするトキコ。
父のマイペースさに振り回されたり、生前の母と同じくらいの歳に自分がなったからこそ分かる、あの頃の母の気持ちだとか、ひとつの"人生"というものにしっかり向き合うドラマだった。

旦那の愛人の存在に気づきながらも耐え抜いた挙句に病気で亡くなった母が切なかった。

ストーリー↓
1
ラジオ番組『トッキーとヒトトキ』のパーソナリティであるトッキーこと蒲原トキコ(吉田羊)は、毎週リスナーから寄せられる「お悩み相談コーナー」で大人気。しかしそんなトキコにも悩みが…父親の蒲原哲也である(國村隼)。自由奔放な父に振り回されるトキコだが、ある日、父について“エッセイ”を書こうと決める。そこには亡き母の人生と、父への愛憎が入り混じる娘の秘めたる思いがあった。

2
ある日、父(國村隼)からの提案で叔母(松金よね子)のお見舞いに行くことになったトキコ(吉田羊)。華道の師範としてバリバリと働き、独身を貫いた叔母は自分で用意したケアハウスに入居した。「外の空気が吸いたい」という願いをかなえるため、トキコはスーパーでの買い物に付き合う。自力で動けない叔母のため久しぶりの外出を精一杯楽しく演出するトキコ。しかしスーパーから戻ると叔母の部屋には見知らぬ女の姿がありそれは過去に見た、父親との不倫疑惑を抱いた女だった。それは叔母の知り合いだったのだった。トキコは特に責めることもせず大人の対応をする。

3
父(國村隼)から、食物アレルギーの疑いがあると一報を受けたトキコ(吉田羊)は、病院に連れていくことに。しかし、診断結果は何事もなく、せっかく来たからという理由で突然「顔のシミを取りたい」と言い出す父。呆れたトキコは学生時代からの女友達である北野(中村優子)とミナミ(石橋けい)に愚痴を言う。いまや「男性の美容」は普通のものだと頭ではわかっているはずのトキコだったが実際に身内がするとなると少し考えが変わる。友達に"父親も自分の気持ちを上げるために美容に気を使ったのかも"と言われ、少し理解するのだった。

4
トキコ(吉田羊)のエッセイが掲載された銀座のタウン誌『銀座百点』。それを探しに父(國村隼)と二人で銀座を訪れたトキコ。しかし、最近の銀座はすっかり様変わりしてしまい、思い出の店がいくつも移転したり、なくなったりしていた。何とかお目当ての『銀座百点』を見つけ喜ぶ二人は早めの夕食を取ることに。店に入るなり早速、掲載されたトキコのエッセイを読む父。そこには、父と母(富田靖子)の出会いの話が書かれいる。しかしトキコが聞いていた話と実際は少し違っていた。父と母が出逢ったその日に父が母の家に転がり込んだわけではなく、また再び再会した時に母が鍵をくれてそこから一緒に住んでいたのだった。再会するまで父は何度も"もう一度会いたい"と思っていたのだった。

5
父親について執筆しているエッセイがネタ切れになってきたトキコ(吉田羊)。幼いころ父と楽しく遊んだ思い出がないという話から、東(田中みな実)に提案され、父(國村隼)と二人で動物園に行くことに。しかし自由気ままに歩き回る父に振り回されるばかりで良いエピソードなどとても作れそうにない。ところが帰りに寄った昔なじみの店で、トキコの知らない昔の父の仕事話や幼い頃の2人のエピソードを知る。トキコは食事のあとに口元を指で拭うのが癖だった。しかしそれはトキコが幼な子の頃に、潔癖な父が口元を指で拭ってくれていたところからきた名残だと気づく。それは父親が紛れもなくそばに居てくれた証。父と遊んだ記憶のないトキコだったが少しほっこりした気持ちになるのだった。

7
トキコ(吉田羊)は友人の北野(中村優子)とミナミ(石橋けい)の3人で、いつものように楽しくお酒を飲んでいた。しかし突然、ミナミが泣きながらトイレに駆け込んでしまった。なんとミナミの夫が不倫をしているというのだ。落ち込むミナミを前にアドバイスをするトキコだったが、それを拒絶されてしまう。そしてその様子をどこか冷めた目で見る北野。仲の良い女友達のそれぞれの人生観がぶつかり合う。トキコはミナミが北野にだけ話していたことにショックを受けたが、ミナミは解決策が欲しい訳でなくてただ現状を話、嘘でもいいから論破せずただ聞いていてほしいと思ったのだ。トキコに話してしまうと解決策を探されてしまう。
トキコは複雑な友人の気持ちに触れたのだった。

8
トキコ(吉田羊)のもとに、結婚直前で別れた元パートナー・青柳タツヤ(岩崎う大)から「久しぶりに会おう」とのメッセージが。迷ったトキコだったがタツヤが東京を離れることを知り、会うことに。思い出話に花が咲く中、過去の自分の言動を省みるトキコ。仕事がうまくいかず「専業主夫」状態だったタツヤにトキコは心無い態度をとっていたのだ。そして、仕事仲間である東(田中みな実)からも結婚・退社の相談をされる。しかしトキコは東の仕事スキルで専業主婦に転ずるのは勿体ないと返す。東も少し思い直すのであった。

9
トキコ(吉田羊)と父(國村隼)は母のお墓参りに行く。母(富田靖子)との思い出話をしているうちに、トキコは家族の中のギクシャクの始まりを思い出す。時は遡り、20代のトキコ(松岡茉優)。C型肝炎で入院する父を毎日のように見舞う若き日のトキコと母だったが、なんと母自身にも癌がみつかってしまう。トキコにとって父と母を同時に介護する壮絶な日々が始まった。ある日、父の病室に見慣れぬ赤い花が飾られており、それが父の愛人だと気づく。

10
父(國村隼)のことだけでなく、亡き母(富田靖子)のことについても、ありのままを書こうと決めたトキコ(吉田羊)は、お互い今まで触れてこなかった話を父に持ちかける。20代のころのトキコ(松岡茉優)は父と母を同時に介護する過酷な日々を送っていた。そしてある日、双方に決定的な事件が起こる。事態を1人で抱えることに限界を感じたトキコは、父の元に密かに通う「あの人」を頼るしかないと苦渋の決断をするのだった。"あの人"は娘に認められたと思っただろう、それがトキコには堪らなく悔しく、母に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

11
母が亡くなった後、父(國村隼)の商売は上手くいかず、ある日、家賃の催促状が届く。父はトキコ(松岡茉優)に黙って家を手放していたのだ。二人の関係はどんどん悪化していく。引っ越しのための片付けに、トキコは友人の北野(大友花恋)とミナミ(さいとうなり)を呼んだ。着々と作業をする中、3人は母の「秘密」を見つけてしまう。誰にも内緒で、父の稼いだお金で買った高価な洋服の数々。それらは袋を被ったまま一度も袖を通してはいなかった。それは寂しさを紛らわすためにしたことだとトキコは思う。そして、現代のトキコ(吉田羊)はこの話をどうしても書き進めることができなかったが、しっかりと向き合うことを決める。

12
父について綴ったエッセイ本がついに完成!そして、トキコ(吉田羊)と父(國村隼)は、亡くなった母の出刃包丁を研ぎに行く。二人の間にはいつもと少し違った穏やかな空気が流れている。トキコはラジオの放送時間の変更を提案され悩んでいた。深夜から昼間の帯番組という提案だ。珍しく父に相談をするトキコ。父はトキコにやってみればと言う。
昼帯のリスナーは自営業の男性と主婦が多い。
それは自分とは境遇が違えど、父と母があった立場である。昼帯のリスナーの悩みに耳を傾けることで、あの頃の父と母の心に近づけるかもしれない。トキコは挑戦することにするのだった。

そしてトキコは、母の辛かったであろうことや綺麗でないところ、つまり人間らしいところを本にする。その本のタイトルが「生きるとか死ぬとか父親とか」だった。
にゃん

にゃん