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大豆田とわ子と三人の元夫のslowのレビュー・感想・評価

大豆田とわ子と三人の元夫(2021年製作のドラマ)
5.0
坂元裕二を一躍有名にしたのは、80〜90年代に流行ったトレンディドラマだそうで(再放送か何かで観たことある気がする)。一見そこに原点回帰したようにも思える『大豆田とわ子と三人の元夫』だけれど、新しい試みを随所に感じさせることから、これは似たような舞台をベースにした坂元裕二の新境地だったのだろうと受け止めた。リアリティの制約が緩い分、少しばかり強引で誇張した表現があっても物語が破綻することはないし、終始ちょっと贅沢な気分になれる洒落た空間と何気ない日常を罪悪感なくぺろりといただくことのできる素朴な金太郎飴のような世界観は、切っても切っても一口目を裏切ることのない幸せな味がした。なんてこった。くすりとほろりをコンスタントに放り込む坂元節は健在で、登場する愉快な人々への親近感や魅力をグイグイと高めてくれるし、どうもこの絶妙なアンバランスさが、この作品の稀有な中毒性を生んでいたように思う。そして、この物語を俯瞰で眺めているように冷静で、それでいて隣でずっと味方でいてくれたような音楽の素晴らしさも特筆すべき点。登場人物の心情やエピソードをエモーショナルに聴かせるエンディング曲はもちろん、トラックメーカーやアーティストを適材適所、各方面から招集した制作陣の企画がこれ以上ない程嵌っていたと思う。最高の時間をありがとう。大豆田とわ子と三人の元夫。
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