デパルマ

大豆田とわ子と三人の元夫のデパルマのレビュー・感想・評価

大豆田とわ子と三人の元夫(2021年製作のドラマ)
5.0
大豆田とわ子は最高。こんな世界水準のドラマが日本で撮れるんだ、って衝撃。かごめが「わたしの人生に恋愛はいらない」って告白するシーンはどうしたってアセクシャル(無性愛)を連想してしまう。ドラマで僕ははじめて見ました。感動してる。とわ子にとって超えられない一作目は八作、八作にとってはかごめだった。一人の男を選んでなお、(性愛を否定することなく)主人公に一人で生きることを決意させるには、その男と一緒になれない理由が必要だったんだ。その答えがアセクシャルだったのかもしれない。無論かごめがそうだって決めつけるつもりはない。でも坂元裕二のことだからそういう含みがあってもおかしくないと思う。ただ、物語の中でいないことにされ続けてきたマイノリティの人達を登場させたは良いものの、彼らを殺してしまったり不幸な結末を用意したりするの、当事者としては辛すぎると思う。マイノリティがドラマの中では幸せになれないのなら、ヘイズコードに縛られて親や神に背いた者は最終的に殺さなきゃいけなかった60年代以前のアメリカ映画と変わらない。たとえば「真実の行方」のどんでん返しもサスペンスとしては面白いんだけどある偏見を助長する恐れがあると思うし、この手のドラマの面白さのために犠牲になるマイノリティの描き方はちょっと危険だと思う。ただでさえほとんど物語に登場しない自分と同じマイノリティのキャラが殺されたり幸せになれなかったりするのを年に何本も観るのは正直辛いから。かごめの死は物語を動かすための装置でしかないのかよ、と言いたくなる。まあ日本のドラマはそこまでの議論にもならないものがほとんどなのだけどね。
とわ子の「あなたを選んで一人で生きることにした」は、しんしんが言ってた「人の孤独を埋めるのは、愛されることじゃないよ。愛することだよ」に繋がる天才的な脚本。唄は若いのに彼氏に尽くして保守的だなー、じゃないよ。医大はなぜか女より男の方が受かりやすいし出世もしやすいっていう社会の不条理を目の当たりにしたからだよ。これからそういう現実を生きていくための最善の方法が、夢を諦めて彼氏のコーラ買ったり宿題したりして家事労働して生きることだと、彼女は思ったんだよ。高校生がそんなことで夢を諦めてしまうのはあまりに辛いよ。最低な現実のカウンターとして坂元裕二はかごめに「あなたみたいな人がいるってだけでね、あ、私も社長になれるって、小さい女の子がイメージできるんだよ」ってメタ構造もった台詞を言わせてるんだ。それに松たか子に内藤和美先生をわざわざフルネームで紹介させたのも意図的だろう。最終回のあのシーンは、同性と恋人だなんてとても言えなかった時代を生きてきた女性に出会って、唄は「そういう現実をこれから生きる」覚悟を決めたってことだと思うよ。あいまいに描かれてるからよく分からないけど、そう受けとった。大豆田とわ子は最高、そしてみんなも最高。それで良い。頑張ろう。
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