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きれいのくにの8637のレビュー・感想・評価

きれいのくに(2021年製作のドラマ)
3.9
人間が、自分の顔を弄り偽ってまで拘る"美"とは何なのか。それを考えた時、冒頭で若返っていく彼女のメカニズムは欲望に対してかなり従順だったのかもしれない。それを男は鵜呑みにしようとしている。何だこの啓発映画は...!

2話でその物語の秘密に気付き、かと思いきや3話でさらなる核心を知った。この演出イカれてる。もう軽々しくこんな事をしないで欲しい。このドラマだけの特別な演出のままであってほしい。

稲垣吾郎と加藤ローサの顔がブランド化...果たしてそれが幸せなのか?プレーンが凡庸なものになって、味付けされた最高の顔が同じように街で歩き回る。いずれ見分けがつかなくなるのではないか。その顔に対するトラウマを別の"同じ顔の人"へ向ける事にもならざるを得ない。
それでもなお永遠の美やパパ活を目指したくなる理由は、歳をとる事への恐怖なのかもしれない。

だが"プレーン"とは救済でもあるのか。
このドラマが主体的に描くのは、"裏整形"してしまった事で虐げられる側の友情関係。こんなに楽しい青春の時間なのに、それが崩壊していく。5人それぞれが苦しそう。誰も悪くないと思う。欲求的に優位に立つ人間と疑問を抱えるクラスメイト、だけど皆青春してる。そして、カラオケで歌われる歌謡曲でいつも泣かされる。

ただストーリーが僕の想像する"地獄コース"にそのまま沿っていて、いつ倫理的レールから脱線するかが恐い...
山中崇には登場シーンから善人とも悪人とも取れないような危機感がバンバン漂っている。
そしてあの"卒業"シーン。映像で観てきたもののなかで最も生々しいものが、そこにはあった。

稲垣吾郎×吉田羊という宣伝展開で、青木柚、岡本夏美らあの5人の若者の物語をメインに見せてくれたことに感謝。
もはや作られた美しさなんて関係無いよ。人間であることの責任+男か女であることの責任って、必ずあるはずだ。
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