takanoひねもすのたり

怪物のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

怪物(2021年製作のドラマ)
3.9
変人警察官(年上)✕エリート理性派(年下)のクセモノふたりの怪演ドラマ。

20年前の妹を含む連続殺人事件の犯人に疑われたドンシク(シン・ハギュン)
警官になって広域特捜部の刑事として活躍していたがパートナーがある事件で死亡。
派出所勤務になり戻ってきた故郷、あだ名は変人、周囲から『壊れた人』として認知。
そこに新たに転任してきたある思惑を抱えた若いエリート警官のジュオン(ヨ・ジング)
……が、それを察したドンシクにとことん振り回されてしまう前半。

父親が本庁の次期長官候補、7歳でイギリス留学(これにはある理由があり)生まれも育ちも教育もエリート純粋培養のジュオン、上流階級ゆえのナチュラルな"人を人と思わない態度"と杓子定規な原則主義の人間を捜査と情緒の両面でひっかき回すのがドンシク。
壮絶な過去を体験し、変人だけど頭脳派ベテラン(しかも変人)に、都会からきたぼんぼんエリートが敵うハズがなく。
しかし執念深くドンシクを追い詰め続けるところは拍手(ジュオン、前半はとにかくすげぇイヤな奴)

20年前の連続殺人事件とドンシクの妹の失踪事件、そして新たに始まった殺人事件が、ドンシク、ジュオン、警察内部、地方議員、地方有力者、そしてジュオンの父親、それぞれの思惑を絡ませながら事件の解決へ向かう展開で、よくこれだけの登場人物がいながら主役ふたりのキャラクターを際立たせ、なおかつ彼らの周囲の人間もきちんと個性が立つところすごい。


中盤にさしかかるとその均衡が崩れ、更に後半になるとジュオンが主導になり、ドンシクが背後からフォロー(共闘)する形をとる。

ドンシク、派出所勤務から庁の監査部へ移動になり服装も変わると、突然洗練された魔性の中年にクラスチェンジしたwww

ドンシクの場合、妹の失踪事件(遺体が見つかっていない/切断された指だけが発見)追い続けてきたという"真犯人とその背後"を突き止めるという行動原理に基づくため(親しい人間に長年騙されていたという怒りはあるが)そこに"壊れる"要素は既になく、とっくの昔に"壊れて"いる人間。

しかしジュオンの場合は違う。
母親との別離、父親との確執という家庭環境の複雑さはあるにしてもドンシクとは比べ物にならないくらい周囲も人生も"甘い"
そんな彼が"壊れる"シーンが後半の佳境のひとつ。演出から台詞まで、これまでの印象(こいつすげぇやな奴だな……)をなぎ倒す迫真。

このふたりの怪演があっての"怪物"ってのは納得(ふたり以外のことも示しているのだとは思うが)

別目線だと百戦錬磨の魔性の中年に、エリート理性派の若手が翻弄されたあげく、ある事実を知り、ある決意を固めるという筋……これ好物ですよ……ええ大好物。

韓国ドラマをある程度みだすと"韓国ドラマあるある設定"を感じるのですが、この作品もそのパターン。
しかし物語の編み方や見せ方が上手いこともあり緊張感を維持したまま最終話まで突っ走れるのが凄い。

主演ふたりが凄かった。

このふたり
「可愛いね」
「あなたも可愛いですよ」
(静かに怒りながらのこの台詞)

「(俺)僕の心配を?」
という応酬が、とてもツボ過ぎてテーブルに頭をぶつけそうになったという余談。