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ケタリング・インシデント〜森に消えた少女のtokyoflaneurのレビュー・感想・評価

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現実と幻覚、人間と自然、その狭間をしつこく行って帰ってするドラマシリーズ。SFであり、ミステリーであり、ファンタジーでもあるような本作はオーストラリアのタスマニアが舞台。自然の美しさや恐ろしさをキャラクターとして扱う感じは北欧のドラマにも通じるところがあって、個人的には好感触。

アナ・メイシー(エリザベス・マデッキ)はロンドンで血液の医者をしているが、最近記憶を無くすことが多い。医者だからか綿密のその記録をしている。そんなある日彼女はタスマニアの崖の上に停めた車の中で目覚める。そこは彼女の生まれ故郷で、若い頃から戻っていない。
アナは子どものころに親友のジリアン(ミランダ・ベネット)と森の中で遭難し、ジリアンは未だに行方不明のままだ。
町の人々はそのことを強く覚えており、久々に戻ったアナを歓迎しない。そんな中クロエという少女だけは快く迎える。
その夜、クロエに誘われてアナは環境保護派のパーティー(レイブ)に行くが、ここでも彼女は記憶を無くしてしまうのだが、クロエはこの日を境に行方不明になってしまう。

ここから様々な町の暗部が明らかになり、話がどんどんと複雑になっていくのだが、必ずしも全てが回収されないで話が進んでいく。細かい話をするとネタバレのようで、多分あまりネタバレにならない不思議なドラマ。

主演のエリザベス・マデッキの超現実的な役作りが全体のトーンと相まって、現実と非現実の狭間と言った感を強めていて、非常に良い感じ。他の演者の現実感(リアルに居そう、
という意味)とは対極的で面白い。

ジリアン失踪事件(ケタリング事件)以外は何も無いような、名も無い田舎町。人口も少なく、皆が皆を知っているような町にも関わらず、様々な思惑と秘密がストーリーを追うごとに明らかになっていくのだが、アナはそんな事にはお構いなしで、自らの記憶を辿る。その強さみたいなものが風景に投影されているような気がする。

2023年5月時点で、今年1番のドラマシリーズ。シーズン2も想定にはあったようだがキャンセルされたらしい。残念。
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