真世紀

江戸川乱歩の美女シリーズ 死刑台の美女の真世紀のレビュー・感想・評価

4.0
テレビで長期にわたり放映された天知茂が明智小五郎を演じるシリーズの一作で井上梅次監督作品。

本作などのシリーズ初期は放送時間が90分枠だったので、実質は70分強。その分、ますますテンポがよいです。原作は『悪魔の紋章』。

冒頭で明智は犯罪学者・宗方(伊吹吾郎)の依頼を受けて、香港での世界犯罪学会で彼の論文を代読することになる。宗方には足の悪い車椅子生活の妻・京子(松原智恵子!)がおり、彼女の病が思わしくなく、日本を離れられないという。明智が依頼を引き受けたのも彼女に心ひかれてだった(オイ、でも松原さんならしょうがないか)。

同じ頃、財産家の川手家は連日の脅迫電話に悩まされていた。父と娘三人を復讐のため、順に殺すという。一家は最近、祖父の娘と名乗りをあげた北園竜子(稲垣美穂子)の財産分与の請求に頭を痛めていた。川手の相談を受けた波越警部(荒井注)は明智に対応を願うも翌日から香港行き。明智の斡旋で宗方がことにあたる。

だが、早くも三女が殺され、その包帯をまいたのみの裸体がマネキンを積んだトラックの荷台にひそかに載せられていたのが発覚。その遺体には指に指紋の渦が三つある世にも珍しい三重渦紋(これが悪魔の紋章というわけ)が残されていた。

というのがあらすじと配役。つまり、明智は不在で宗方が事件にあたり、明智帰国後は二人が共同し、推理合戦もという趣向。

宗方の仕事部屋は隠し扉に釣り階段、さらに無惨絵などが資料として多々と凝りすぎていいですな。

なお、タイトルの死刑台の美女とは川手家の長女・民子。下着姿で固定され、振り子のように揺れながら下がってくる刄に両断されんとする。演じるは若き日のかたせ梨乃さん。極妻シリーズを経た今、そんなことしたらどんな返り討ちにあうか、たまったものではないが。この時、同時に明智の助手・文代(五十嵐めぐみ)も別のタイプの死刑台にかけられます。

お茶の間に猟奇の片鱗を。このシリーズ、やはり面白いです。
真世紀

真世紀