カーネル

ライオンのおやつのカーネルのレビュー・感想・評価

ライオンのおやつ(2021年製作のドラマ)
3.8
名作力作が多いNHKプレミアムドラマ枠。

『本気のしるし』で代表されるように土村芳の演技力は疑う余地なし。それ故に彼女が主役の終末期ドラマには正直、悲しさや痛みよりもある種〝怖さ〟が予想され、覚悟して視聴しました。

土村芳の渾身の役作り(ウィッグをとった時は息を呑みました)とナチュラルな演技に一気に物語に引き込まれ、一緒に島に渡ったつもりに。そう、全編通して擬似体験させて貰った感じです。
私に、終末期を迎えた近しい人を見送った経験があるので〝死〟が恐れの対象ではなく、いずれは自身に降りかかってくるものとしてシミュレーションのように考えて見ていたかもしれません。

宣告を受けた辛い気持ちからそれを受け入れる過程。素敵で快適そうなホスピス。そこでの日常と出会いと別れ。家族や友人との関わり方。
そして〝ちゃんと生ききる〟という事。
そして、このドラマの素晴らしいところの一つに、主人公が旅立ってからのその後がちゃんと伝えられていることです。彼女がいなくなった世界のそれぞれの場所を彼女がチョッと立ち寄る感じ。あれがたまらなく良かったなぁ〜。すっごいわかるんです、あの感じ。私もああしたいなって。

物語のオープニングで港からワーゲンバスでライオンの家に向かうショットと、エンディングで同じバスが同じ道を港に向かっていくショット。それだけでライオンの家の淡々とした日々がわかる。
じつに上手いなぁ〜と思いました。

そして、キャスティングされた俳優さん達、皆さん素敵でした!特にホスピスのメンバーがそれぞれの個性を絶妙に演じていて、笑わせられ、かつ涙しました。声を出して泣いた回もありました。

〝こんなの現実的じゃない〟とか
〝あくまで理想のカタチじゃん〟とか
〝出来過ぎ。所詮ドラマだ〟なんていう見方は一切せず、素直に〝いいなぁ………私もこういう終わり方を探したいなぁ〟と思いましたね。
とても参考になりましたし、今後の支えにもなり得る作品でした。ありがとう。

しかし………いーなー!
私もあそこにいきたいぞ、
あの島とライオンの家!





ひとつ。
こういうのはどうにも調整出来ないのかもだけど………
ライオンの家、として登場する白い建物が、同時期に放送の謎めいたドラマ『漂着者』で共同生活団体〝しあわせの鐘の家〟として出てくるので、ライオンの家の屋上にローゼン岸本(野間口徹)がいるようでニヤニヤしちゃいました(笑)
熱海にあるんですね、あれ。
カーネル

カーネル