胃潰瘍のサンタ

相棒 Season 3の胃潰瘍のサンタのレビュー・感想・評価

相棒 Season 3(2004年製作のドラマ)
3.6
力の入った長編が多いシーズン3。
お馴染みのテーマ曲、片山雛子や陣川くんの登場に、公安ネタ政治ネタの回も加わり、「相棒らしい」雰囲気になっていく。
とはいえ、長編はどれも尻すぼみだったというのが正直なところ。『双頭の悪魔』シリーズなんか序盤は陰謀の匂いでワクワクしたのに、結局は3話かけた片山雛子の紹介で終わってしまった。
ミステリーとしてもシーズン2の方がアッと驚くような話が多かった。
まあもっとも、常に形や色合いを変えていったからこその長寿シリーズではあるのだろうけど。

以下、印象に残った回。

『誘拐協奏曲』
失踪者が7年越しに誘拐されて人質になる、というアイデアからして秀逸。誘拐モノなのにほぼ密室劇を成立させてしまう巧さが際立っていた。謎解きはちょっと強引だが、映像でしかできない展開でなかなか唸る。

『警官殺し』
このシーズンで一番好きな回。地味な話かと思いきや、一人の警官の死が組織内の暗闘を呼び、どんどん話が膨らんでいく。ミステリーとしてもサスペンスとしても最高に面白い。相変わらずやるせない顛末に反して、相棒どうしの絆の深まるラストが実に爽快。

『薔薇と口紅』
冒頭の覚醒剤取引と、女子校・薔薇園・シェイクスピアという場違いな組み合わせが、謎解きを通して完璧に繋がる構成。驚かずとも唸ってしまう。


コアなファンの間で名作と名高い『ありふれた殺人』も面白かった。
いずれもやはりシーズン2のお気に入りEPに比べると一枚落ちるが、櫻井武晴脚本の回は飛び抜けてクオリティが高く、中でも『警官殺し』は圧倒的。

最後に、惜しかったのが輿水脚本による最終回『異形の寺』。
『ピルイーター』と並んで先見性が光るテーマに驚いたものの、瀬戸内や鹿手袋が登場する前半が妙に長くて、「完成した話に無理やり要らないキャラ突っ込んで尺延ばしたのか?」と思えてしまった。