胃潰瘍のサンタ

相棒 Season 5の胃潰瘍のサンタのレビュー・感想・評価

相棒 Season 5(2006年製作のドラマ)
4.3
「こういうのが観たかった!」というエピソードが盛りだくさんのシーズン5。
スペシャル版の名作『バベルの塔』『サザンカの咲く頃』をはじめ、再放送で部分的にも観たことのある回が増えて、「この話、こんなに面白かったのか!!」と大満足。

特に『バベルの塔』は初めて観た頃が懐かしい。
NHK『外事警察』の傑作ぶりに度肝を抜かれ、他の古沢作品も観てみたいなと思っていた矢先のこと。
たまたま再放送で『バベルの塔』と出会い、「何だこの面白さは!」とエンドクレジットを確認したら、「脚本 古沢良太」。
一生ついていきたい脚本家と確信した。
今やすっかり超人気。実力って恐ろしい。

サスペンスに振り切った『バベルの塔』以外も、ミステリーとしてキャラクター劇として円熟の極みに達しており、ほとんどが水準を軽々超える面白さだ。

以下、中でも好きなエピソードを。

9話『殺人ワインセラー』
『殺しのカクテル』『殺しのピアノ』を彷彿とさせる、プロの熱い矜持と仄暗い執着を描いた傑作倒叙。ラストの「入れ替えトリック」が秀逸で、「ワインにだけは嘘をつけない」犯人像に櫻井武晴脚本の妙味が味わえる。

15話『裏切者』
これも櫻井脚本。名作『警官殺し』の構図再び、瓢箪から駒な警察不祥事シリーズだが、今回は相棒どうしの絆が更に深まっていて、キャラクター劇としてもサスペンスとしても見どころたっぷり。『サザンカの咲く頃』の前哨戦のようなクライマックスの駆け引きに思わず唸った。

17話『女王の宮殿』
雨宿り先でのハムスター探し、という何とも地味な展開で新鮮だが、意外にも二転三転、真相が一つ明らかになるたびに新しい事件が掘り起こされる釣瓶打ち展開。後のシリーズでは大風呂敷を広げる印象の戸田山雅司脚本だが、この時期は些細な「気付き」にふんだんな伏線が施された緻密な脚本で、ミステリーの醍醐味を味わえる。ラストも渋い。

19話『殺人シネマ』
残酷な真実と優しいドラマでホロッとさせる岩下悠子脚本、その本領とも言える1本。謎解きがどうというよりも、真相に込められた登場人物たちの「想いの余白」にグッとくる。

20話『サザンカの咲く頃』
もはや語る必要のない名作回。エスピオナージを絡めた展開は巧みに作られ、クライマックスの駆け引きまで緊張感が途切れない。諜報というモチーフ、杉下右京の奇策といい、「相棒といえば社会派」の代名詞。公安の分かりやすすぎる追尾と不必要な襲撃シーンだけはご愛嬌だけど。

他にも平田満演じる詐欺師との心理戦を描いた『せんみつ』、高橋克実の古風な探偵キャラが大活躍する『名探偵登場』、発想が病気みたいな珍作『Wの悲喜劇』など、どれを観ても全然違った楽しみに溢れている。
このシーズン、リアタイ視聴者は幸せだったろうな。

点数は全エピソードの平均。