なっこ

ミステリと言う勿れのなっこのレビュー・感想・評価

ミステリと言う勿れ(2022年製作のドラマ)
3.1
原作未読。
※以下各話感想

#11-12

「一緒に行こう」
「どこへ?」

さぁ、私たちをどこへ連れて行ってくれるでしょう。我路くんと整くんは。

日付通り順番にちゃんと描いて欲しかったな。時間の流れがよく分かんなくなっちゃった。我路くんとの再会はライカと出会う前ってことだよね。印象派展には間に合わなかったはずなのにポストカード持ってたから不思議には思ってた。あれ?アンリ・ルソーは印象派に含まれてたかしら…、うーん。どちらにしてもこのシリーズの終わりを10話のライカとの別れで終わらせてくれていた方が、余韻があって美しかったと思う。
桜が満開になったこの季節に合わせて。

#10
新春焼肉デート

最後にはちゃんと全て話してくれたライカさん。強くて儚い人。人の傷付きに敏感で誰かを守るために痛みを代わって引き受けてくれる人こそ本当に強い人だと思う。

人格って何だろうね、こんなにも儚く消えてしまうものなのかな。まるで幻を見ていたようだ。でもどこか、これは恋に似ている。それも現在進行形でなく、失くしてしまう方の恋に。

恋愛が進行している時間の中にしか存在しない互いの人格というものもあると思う。このライカとのエピソードが切なく心を打つのは、失った恋を思い出させるからかもしれない。恋が消えた瞬間に、その人はまるで別人格にでもなったかのように感じることがある。恋が始まり終わるその時までにしか見えてなかったその人、というのもあると思う。覚めてしまったときにはもういない。まるで抜け殻のようなその人がそこにいるだけで、恋が終わった瞬間に全ては色褪せ始める。

ソメイヨシノはクローン。江戸時代に生まれたその時から、ずっと一本の木であり続けている。まるで見えない根で日本中の土の下で繋がっているかのように。そして、それは春が来る度に咲く。絶えず咲き続ける、未来に向かって永遠に。一本の木から始まるその壮大なイメージを私も毎年春に感じる。

一本の木でありながら、それぞれ別の土地に根付く一本一本違う木。その美しさはどれも変わらないけれど、一本から始まったその長い長い年月を全て記憶し受け継いでいるのか、それは分からない。始まりの木はもしかしたら、枯れてしまったかもしれない。でも新しく次技されるその一本にも、記憶の彼方にその始まりの一本の何かが残っているのかもしれないと思う。だから同じように、退院して新しく始める生活のなかにもどこかライカらしさを、千夜子はきっと受け継いでいくのではないだろうか。

もう会えないのだろうけどれど、完全に消えたわけじゃない。
今年の桜は、去年の桜とは違う。でも毎年変わらず咲いてくれる。だから、千夜子が生きている限りライカも生き続けてる。

そういうことなんだろう、きっと。

#8→9
いい大人が透明人間になりたいと言う時は要注意

その時“消えたい”と“死にたい”は同義だ。そして、殺すか殺されるかの二択で生きている人には隠し通したいことのために全員殺すという選択肢が存在することを教えてもらった回だった。

蔵之介が出てる時点で怪しいのはもうこの人しかいないという答えは出ていた。でも彼の抱えてる苦しみがこんなにも深くそして苦いものだとは全く想像できなかった。それを知るための後半20分。謎解きよりもずっと興味深い彼の内面、恐ろしい計画、そしてその苦悩の中年を生きる人しての厚みを見事に表現した演技。

こんなはずじゃなかった、もうずっと前からきっと彼は思ってる。でも、誰も彼のその苦しみに寄り添えなかった。言わなければ分からない、では、言えなくさせているのは何か。失敗や弱さに向き合えない、そうさせているのは一体何か。

整はケアされるべき人に対して公平な眼差しをそそげる稀有な人。天達もきっとそうなのだろう。結果の重大性よりも介入すべき段階や必要なケアについてちゃんと考えられる人を育成しているのなら、心理学ってこれからもっと求められるはずの実学なんだと思う。

あの2人が刑事だとは思わなかったな、日本の警察も優秀だってアピールかしら。潜入捜査的な。なかなか思い切った作戦だよね、でも、確かに正攻法では崩しにくい犯人だったろうとは思う。

#7
映像に嘘をつかれてしまうとどうしようもない

映画「ビューティフルマインド」を思い出した。あれは衝撃的だった。でも、今回はどこかに引っ掛かるものがあった、ひとりで居るときの彼の饒舌さに少し違和感を感じていたからかな。
天使は暴力をより大きな暴力で払い除けたに過ぎない。自分を助けた方の暴力とその生きる為の決断をどう捉えてその後を生きていくかは、サバイバー自身に委ねられてしまっている。
いっぱい考えることも、考えたことを話すこともよく生きるには必要。そして、もっと必要なのは、支離滅裂な内容でもその人なりの真実を根気強く聴く耳を持つ人。整のような。

教室内で起きていることを全て解決できたなら多くの犯罪や悲劇は未然に防ぐことが出来るだろう。整のような姿勢で教師だけでなく、スクールカウセラーやスクールロイヤー、スクールソーシャルワーカーなど、心理・法律・福祉の面からも子ども支える人がたくさんいてくれたなら、と思う。それが無理だとしても、整に共感し、彼のような聴く姿勢を持つ人がひとりでも増えていくなら、きっと子どもたちは救われていく。この物語は、もっと深くそして、長く作り続けて欲しい、今の世の中に必要な物語のはずだから。

#6
ミステリと言う勿れ

この言葉に込められた意味がようやく分かり始めた。分かる人間には分かる。そこにある痛みも恐怖も理由も。当事者にとって、それは解くべき謎なんてものじゃない、ただの真実。そんな想いがあるのかもしれない。ミステリと呼べる人間はそこから距離のある人間だけだ。整はどうなのだろう、危ういところを歩いている気がする。
「箱の中のカブトムシ」の話は面白かった。彼の専攻は何だったっけ。

ライカとのイブのプレゼント交換もほのぼのしてて良かったけど、後からあの飾りは「赤」色だったから御守りの意味合いもあったのかと気が付いた。彼女はどこまで先の展開を読んでいたのかちょっと不思議。そして整が用意したのはアンリ・ルソーの「蛇使いの女」のポストカード。無事印象派展は見れてたのね。ルソーは原田マハさんの好きな画家で『楽園のカンヴァス』も読んでいたので、ここで出会えて嬉しい。『ホスピタルギャラリー』という本があったな。アートの空間は癒しの力があると思う。ライカのような入院患者もいつか病院でも本物のアートに触れられるようになると良いな。

#5
シックスセンス的展開。

でも、私には人間力が足りていないのか、元刑事の彼が選んだ結末が腑に落ちない。死期が近づかないと思い至らない境地もあるのかもしれない。それが、栞の挟んであった頁の言葉の意味なのだろうか。
小日向さんの表面的な言葉の上だけの感情ではなく、もっとずっと深いところで心が動いているのが表情から伝わってきて、ああ本当にすごい役者さんだなあと思った。
自省録、読まなきゃだね、こんなにも長く愛される古典なら。

整くんの死のイメージは、私の考えるものと少し違うけれど、眠っている又は夢見ている状態に近い、というこのふたりの感覚はよく分かる。そして、闘病生活は健康で文化的な俗世間を生きる人々とは離れ、隠居して浮世離れした感覚に近いものになることも想像できる。そうなったときに、このまま墓まで秘密を持っていくことが本当に相手のためのなるかどうか、深く考えたのではないだろうか。優しかった彼が、秘密を暴かれることを恐れて本当の優しさからではなく、保身のために治療の援助を申し出てきたように感じたのかもしれない。または、今でもその暴かれない罪に対して苦しみを抱え続けている姿を不憫に思ったのかもしれない。生きているうちに償いの機会を与えられないこともまた不幸だと、彼は考えたのかもしれない。そうだと良いな。相棒として騙されたことの仕返しではなく、相棒として最期の情けをかけたのだと私は思いたい。彼の苦しみを少しでも軽くするように。死の間際にはきっとこれらの恐ろしい罪に向き合わなければならなくなる彼のために。

#4
1話完結で犯人役はゲスト。演技対決を楽しむタイプのドラマなのかな。雨が降っている、風景描写が心理描写を兼ねている、これを漫画でどのくらいの長さで描いていたのか。1話でスッキリ終わらせるエピソードとしては十分、尺に文句はないけれど、もっと見ていたかった。整がもっと彼と話したかったと思ったように。私も記憶が戻る前の彼にもっと素直にいろいろ語ってほしかったと思った。
整が事件を引き寄せるのか、事件を起こす人を惹きつけるのか、これまで犯人は男性ばかり。対女性との対決もちょっと見てみたい気がする。キントリみたいな。
詩の朗読、ちょっと怖い雰囲気で始まったけど。良い声。最後まで私も通して読んでみたい。文学作品の引用多めで楽しかった。

#3
うまく言えない違和感。たぶん整が正で我路くんが負のキャラクター、この両輪で物語が進んでいく、漫画ならスッとこの世界に入っていける。でも、現実世界の延長を描くドラマの世界に、ファンタジックな漫画の世界感を融合していくのはちょっと無理があったのかもしれない。特に一線を越えてしまう犬堂家の面々の言動を正当化してはいけないと思いつつ、キャラクターとして我路に惹かれてしまうのは、ちょっと…とモヤっとしてしまった。
改めて漫画でもちゃんと読んでみたいなと思った。謎を残したまま次の事件に移っていくあたりは、連続ドラマの展開としては上手。我路くんとの再会はまたゆっくり見せて欲しい。

#2
「どう怒っていいか分からない人は、何が正しいかも分からない」

そっか、“逃げてもいい”では、救えないのね。
整のように突き詰めて考えるクセは必要だと思う。なぜ、自分はそんな葛藤を抱えなければならないのか、正論でどんどん突き詰めれば良い、他人を傷付けず自分を救えるところまでとことん。
整のお部屋の中もうちょっと見たかったな。草間彌生さんのカボチャのオブジェ、あれ、私は買うかどうか散々悩んだ。印象派展行きたかっただろうな、ショップでグッズをきっちり毎回買って帰ってそうなセリフ、好印象。

#1
原作未読。ミステリーな会話劇。キャストは演技派がズラリ。でもこの1話目の中で一番難しい役をこなしたのは実は、日本のオジサン、お父さんを体現したエンケンだった気がする。立場が一気に反転する場面で見せた彼の表情、動揺、主人公の指摘を全て逆上せずに受け入れていく潔さ、最後に明かされる彼が辿り着くはずだった“真実”までとても鮮やかな展開だった。ドラマだけど、この第一話は特に、警察署内部の一室で起きている会話劇が中心だったから、演劇にでもできるタイプのシナリオだなと思った。主人公が動かないまま推理だけで進行していくタイプのミステリ。
久しぶりに月9で筒井道隆さんの演技が見れて嬉しい。
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