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Sports Night Season1(原題)のEikeのレビュー・感想・評価

Sports Night Season1(原題)(1998年製作のドラマ)
4.8
プロデューサー兼脚本家アーロン・ソーキンと言えばTVで言えば「ザ・ホワイトハウス」、映画で言えば「ア・フューグッドメン」「ソーシャル・ネットワーク」等で知られております。
そのソーキン氏が「ザ・ホワイトハウス」以前にTVで初めて連続ドラマとして世に送り出した「ヒューマンコメディ」の傑作がこの「スポーツ・ナイト」です。
キャラクターや取り上げられているテーマは「ザ・ホワイトハウス」と共通する部分も数多く見受けられ、ソーキン氏の志向や人物造形の特徴などが見て取れる内容となっております。
私は本作をアメリカ留学時にたまたま目にして正にぶっ飛ばされるような インパクトを受けた思い出のドラマシリーズであります。

スポーツ専門のケーブルTV局CSCの看板番組「スポーツナイト」(日本で言えば昔の「プロ野球ニュース」みたいな感じ)の製作スタッフたちを主人公に据えたこのドラマ、とにかく脚本・演出そして役者も「お見事」の一言に尽きます。
1話30分の各エピソードは正に笑いあり涙ありの人間ドラマ。
登場人物は皆、善良でありながらも欠点や問題を抱えた人物として描かれています。
「完璧な人間などいない。だからこそ」という前提で紡ぎ出されるエピソードはそれこそ山あり谷あり。
それもあって友情、ロマンス、チームワーク等など全てが際立って感動を呼ぶドラマになっています。
これほどのドラマが僅か2シーズンで打切られたのは実に残念です。
元々1話30分というフォーマットはアメリカのTVにおいては基本的に「コメディ」(いわゆる”シットコム”ってヤツです)という認識なのですが、本シリーズは到底その範疇に収まる内容では無く、それが視聴者に巧く伝わらなかったのが原因かと思われます。

しかしその第二シーズンでは番組打ちきりの事実自体をドラマの中身に反映させて(TV局が売却されてしまう!)製作サイドの主張を展開するという離れ業までやってのけたこの脚本の素晴らしさ!
取り扱われるテーマはドラッグ関連、人種、貧困から職業差別など多岐にわたっております。
それでいて絶妙にユーモアを盛り込んでいて声高に上から目線で人を諭そうとしないアプローチも凄いなぁと感服いたしました。

これを見るとF・キャプラのレガシーが今も生きているのだという感慨と共に人を信じることでしか描けないものがあるのだということを痛感させられました。
日本ではいまだに紹介されておりませんがまことに残念です。
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