ゴトウ

宮本から君へのゴトウのレビュー・感想・評価

宮本から君へ(2018年製作のドラマ)
4.0
宮本にイライラする。けれど、自分は多分、田島や益戸や神保よりも宮本に似ているんだと思う。頭でいろいろこねくり回しても、結局自分のことしか見えてない。学校を出るまでのことばかり考えたり話して、「社会人なら」「仕事なんだから」という言葉でこだわりや意地が折り畳まれて消えてしまうことに納得いかないけど、そのこだわりや意地を押し通すだけの力も知恵もない。自分と同じじゃん。

勝てない戦いに挑む主人公は確かにかっこいいけれど、それを会社勤めの男に当てはめたときにはちょっとおかしなことになってしまう。誰もがスーパーヒーローになれるわけではないと薄々わかりつつ、まだ社会に出ているわけではない今の自分に刺さり過ぎて見たくないくらいだった。仕事でも「負け」、ケンカでも「負け」、負け続けの宮本が、都合の良い時だけ自分に寄ってくる女に言いたい放題ブチ切れるという最後のカタルシス…というほどでもない苦い後味だけが残るラストも重たい。「どうしたら『勝ち』になるんですかね?」という宮本自身による問いがあるだけに。

原作のキャラクターには結構マンガチックな人も多いけど、実際の俳優が演じても違和感なく、かつ不自然でない形で演出していて良いと思った。マンガチックとはいえあくまで登場人物たちは一般人なのでやりやすかったのかもしれない。先に映画を観たけれども、連ドラで宮本が学生時代の全能感(あるいは世間知らずパワー)をはぎ取られていく過程を描き、愛がどこまで苦難を乗り越えるための力になるのか、復讐が過去の痛みをどれだけ和らげてくれるのか、という重くて大きいテーマの方を2時間の映画にするのは上手な振り分けだと思った。映画の方も素晴らしいのでぜひ観てほしい。
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