都部

アンブレラ・アカデミー シーズン3の都部のレビュー・感想・評価

3.7
報告連絡相談を怠り続け、集合と離散を繰り返す愛すべき愚かな家族達が帰ってきた。

二週間立て続けに世界を二度救った彼等に待っていたのは自分達と取って代わる新たな家族達──素直にスパローアカデミーとの対立構図をシーズンに渡って繰り広げるとは思っていなかったが、しかしこの物語の推進の為の燃料として使い潰していく思い切りの良さは嫌いではない。
一話のあっさりとした退場は、梯子外しとして上出来で笑ってしまった。

あくまでも家族ドラマを主題としている故にサブジャンルとして配置されたヒーロー要素は健在で、大抵の場合彼等の能力はヒロイックとは無縁のいざこざの場でのみ用いられるという点はシーズン3も一貫している。

虱潰し的な家族問題の浮上による展開のさせ方にはやはり鈍重さが否めないが、この奇妙な倦怠感を伴う所感こそ本作の家族像と言われればそんな気もしてくる。とはいえ曖昧模糊とした結末と謎とクリフハンガーにはそろそろウンザリしてきたので、シーズン4辺りで全てを精算して綺麗に完結させて欲しいものである。
またぞろ射精管理の寸止めめいた後味はごめんなので。

思わぬ人間関係の化学反応という点では、家族のある種のメンターとしてのクラウスの立ち回りが非常に良かったように思う。別時間軸の父親との歪な協力関係で交わされる会話は等しくユニークだったし、積み重ねてきた描写を無にする顛末には落胆させられるものの行き詰まりを抱えた家庭ドラマの良いスパイスになっていた。

なんというかこのドラマシリーズは結末を前提とした伏線や布石またキャラクターの心情の変化がとかく前面に出ている印象で、他作品以上にキャラクターが姿のない神の奴隷として右往左往しいてるかに思えてならないのだ。そんな脚本から漂うその歪な取り繕わなさが、こうした奇妙な印象を抱かせるのではないかと思わなくもない。

随所随所でセンスが光るドラマシリーズなだけに、毎回シーズンの更新の度に多大な期待を抱えては『まぁ、色々言いたいことはあるけど面白くはあったよ』という所感に落ち着くのは残念でならないが、この奇妙な家族ドラマの行く末を見届けたく思うのでシーズン4を楽しみにしよう。
都部

都部