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シー・ハルク:ザ・アトーニーの都部のレビュー・感想・評価

3.6
法廷コメディとしては及第点の出来だが、連続ドラマとしての軽妙さのコントロールは他ドラマよりも果たしている。メタ的な本ドラマへのミソジニスト的な言及を作品にシニカルに組み込み、のみならずMCUに対する自己言及性を最後の最後で果たす痛快さは評価点としては余りある。

女性は女性である前に一人の人間であるという思想に基づく人間味に満ちた俗的な側面を描きながら、女性に降り掛かる男性による裁定的な弄び方に対する批判を織り込むことにも成功しており、真っ向からフェミニズムをドラマとして通しているのも中々良かった。

縦軸の連続性は気薄であるものの、そうした一貫性あるテーマで筋を通していたのでドラマとして収まるところに収まってる感触はある。
第四の壁を超えるというシーハルクの属性をああいう形で落とし込めるのは強みだし、特定の過激派ファンダムまたMCUに対する煽りすらコメディという意味で昇華させるという点では、最終回が最も笑えたというのがある。

とはいえ、作品としての畳み方は上出来のそれとは言えないもので、『そこ』をこれからであると描かずに物語の幕を閉じるのは本作が一貫してきたドラマへの解答の場からの逃避にしか思えず、マット登場までの中弛みを覚えるダラダラとした話数の連続も相俟って緩慢なままに物語は幕を閉じたという印象にどうしても落ち着いてしまうだろう。
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