竜平

シー・ハルク:ザ・アトーニーの竜平のレビュー・感想・評価

4.4
「マーベル・シネマティック・ユニバース」配信ドラマシリーズ第7弾。ハルクことブルース・バナーの従兄妹であり弁護士の女性「ジェニファー・ウォルターズ」がひょんなことからハルクのような緑色の外見と超人パワーを得てしまい「シー・ハルク」の通称がついてしまう事態に、そこから巻き起こっていく騒動を描く。全9話。

『ワンダヴィジョン』と並んで話数が一番多い、んだけど各話の時間はそこまで長くなくマジでサラッと見れてしまうのがまず特徴。作風としてもテンポ感が良くてコメディ推しで毎話バッチリ笑かしてくれる。今回はというとマーク・ラファロ扮する「ブルース・バナー」、『インクレディブル・ハルク』以来14年ぶりとなるティム・ロス扮する「エミル・ブロンスキー」a.k.a.「アボミネーション」、最近MCUの様々な作品で見かけるベネディクト・ウォン扮する「ウォン」などがゲストで登場、どの回でというのはもちろんお楽しみにという感じで。また主人公と共に新キャラたちが続々登場。これがまた『ミズ・マーベル』のラストでしれっと明かされた「突然変異」にまつわる多種多様な能力を持つ者たち、所謂「ミュータント」なのか、どうなのか、みたいな。もうこれはご存知“あの作品”への布石だろうけど、それもまぁ置いとくとして。とにかくサプライズ的なおもしろさが各話にぎっしりで、毎週本当に楽しませてもらったというところ。

今回は主人公が弁護士というのもあって法廷ドラマ(風)に仕上がってるあたりもMCUとしては新機軸。超人たちに対して「裁判」が開かれたり「法」が適用されたりと、あまり細かく描かれてこなかった部分がここにきて出てくる。あと忘れちゃいけないのがこのジェニファー及びシー・ハルク、『デッドプール』以来となる所謂「第四の壁」を壊すキャラであるということ。原作から踏襲してる設定とのことだけど、カメラ目線ですぐこっちに話しかけてくるし、脚本のうんぬんにも口を出すし、そのメタ的な要素の入れ方がまた上手い。これは正直、見る前は破綻してしまうんじゃないかと心配してた、けど全然大丈夫だったなと。むしろもっとやれ状態。でなんと言っても変身後のパワフル具合、とそれを活かしてのおもしろ展開よ。てか1話目なんかは、さながら『インクレディブル・ハルク』の冒頭のような潔さ。「とりあえずこの人はハルクってのに変身できます」というのをパパッと紹介してくれる感じ。そんでタチアナ・マスラニーが主人公ジェニファーを好演中の好演。彼女の様々な面での魅力というのが今回は詰まりに詰まってる。30代で独身ということで、恋愛やら仕事やら結構自由に生きてはいるんだけど、なんというか世間の目とかじつはあったり、陽気な姿と同時に感じられるちょっとした哀愁、自身が感じてるであろう劣等感とか焦燥感とかもたまーに見え隠れするのが良き。笑える話ばかりかと思いきや5・6・7話あたりでジェニファーの内面に触れるような切ないエピソードをしっかり持ってくるあたりニクい。今作では女性のあらゆる面での「力強さ」というのが描かれてる印象で、コメディと言いつつヒューマンドラマとしてもしっかりグッとくる内容になってると思う。で(なるべく)力で戦わずして問題を解決しようとするのもこのキャラならではなんじゃないかな、故にアクション好きにはちょい物足りないかもねー。

終盤ではお待ちかねの“あの”ゲストキャラクター、そしてジェニファーに降りかかるまさかまさかの展開、そしてそして、とまぁこれも完全に見てのお楽しみということで。最終話が最悪と言ってる人が多いイメージなんだけど俺の感想としては最高、このキャラだからこそできるようなお遊び展開にめちゃくちゃワクワクしたしゾクゾクした。まぁMCUの本筋と今後どこまで関わるのかはわからないけど、たまにはこーゆーわちゃわちゃしたのもいいね的な。総じて『ロキ』に並ぶ快作だったなと、かなり好み。そんで今回でまたしれっと伏線張られまくったぞーうおーー。ドラマ次回作は我らがニック・フューリー初の主演作『シークレット・インベージョン』。
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