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原潜ヴィジル 水面下の陰謀のEikeのレビュー・感想・評価

原潜ヴィジル 水面下の陰謀(2021年製作のドラマ)
3.5
ティーザーで見て以来楽しみにしていた全6話から成るBBCの新作サスペンス。

本作の設定は現代。
英国海軍の原子力潜水艦VIGILが舞台。巡航中の潜水艦内でクルーが死亡。状況から麻薬の過剰摂取による自殺と推定されるのだが艦がスコットランド沖にいたために実況検分はスコットランド警察の管轄下に。
しかし任務遂行中の潜水艦が港に戻ることは許されないためスコットランド警察からエイミー・シルバ警部が3日間の予定でVIGILに送り込まれることに。
彼女は艦内で必ずしも協力的とは言えない同艦のキャプテンやクルーたちから疎まれつつも、死亡したクルーの遺体を検分し状況から殺人の疑いがあることに確信を強めて行く。
エイミーは同じスコットランド警察のキルステン・ロングレース巡査部長を地上班として指名し、死亡したクルーの調査を依頼。
次第に明らかになって来たのはVIGILの置かれている不穏な状況。
クルーの死亡した当日、VIGILは海上で操業中のトロール漁船が何らかの理由によって沈没し乗組員が死亡するという「事故」を察知。
しかし潜航中の潜水艦が海上に浮上することはその所在を露呈することになるため救助に向かう事は出来なかった。
問題は艦内で音響分析官がトロール船を沈没させたのは別の潜水艦である可能性を示唆した事。それはつまりVIGILは察知不能な「敵」によってその動向が把握されていることを意味する。
エイミーは死亡したクルーのGFから死亡したクルーが麻薬とは無縁であったとの証言を得る。そしてクルーの軍の宿舎を捜索中に隠されていたUSBを発見。その中にはVIGILの抱えている問題を糾弾するクルーの証言が…。

古今東西、潜水艦を舞台にしたドラマには秀作が多い。飛行機程メジャーではないが時折思いついたように潜水艦を舞台にしたり素材にした作品が登場する。
戦争や戦闘を扱った作品の中にあっても潜水艦はかなり特殊な設定であり、それもあって興味を引き付けてやまないのかもしれない。
潜水艦と言う「密室」での殺人事件という設定は掴みとしてバッチリであるがドラマとしては殺人事件にまつわるミステリーに加えてもう一回りスケールの大きなポリティカルスリラーの要素が組み込まれているのが大胆。
しかし大味な軍事スリラーの印象が強くなり過ぎないのは主人公が女性だからと言う点もある。
ドラマとして複数の対立構造が用意されている。
英国海軍VSスコットランド警察、女性刑事VS男性海軍艦員。
その上でさらに現代らしい視点も盛り込まれており、主人公のエイミーとキルステンが元パートナー関係であったことがドラマを補強している。

中々に楽しめたのだがポリティカルスリラーとしての側面の結末が尻すぼみにも思え、この要素の導入が巧く機能しているかどうかは見る人次第かも。しかしあれ以上スケールを大きくすると6話では到底収まらなかっただろうし…難しいですね。
それとヒロインのエイミーがある理由から「閉所恐怖症」気味であるという設定もスパイスとしては理解はできるがちょっとわざとらしいかな。

それでも潜水艦内部のドラマだけでなく地上での事件捜査を並行して描きながらサスペンスを盛り上げていく構造自体はお見事で見応えがありました。
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