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D.P. -脱走兵追跡官-のsoopenのレビュー・感想・評価

D.P. -脱走兵追跡官-(2021年製作のドラマ)
4.2
久し振りに夢中で最後まで一気見した作品です。6話と短いながらも凝縮された濃い内容に圧倒されました。

韓国の徴兵制の実態を描いた作品で、先輩が後輩を何の理由もなく虐め、逆らえずに殴る蹴るなどの暴行を受けた後輩が、やり場のない怒りを、理不尽にもまたその後輩に向けて発散する負の連鎖。
どこの国でもあるような軍内部での虐めのように見えて、韓国のそれはこの国の連綿と続いてきた身分制度からくる、金持ちが庶民を見下す体質も含まれているなと痛烈に感じました。親がいなかったり、大学を出ていなかったりすると、それを餌に殴られたりする。厳しい競争社会で育てられ、ただでさえフラストレーションが溜まっている中での急に訪れる兵役業務。誰が最初に始めたか、虐めは果てしなく連鎖し、エスカレートしていく。中には体だけではなく心も、存在自体も傷つけられていく人々がいて、彼らの我慢の緒が切れた時、何が起こるか、想像に難くない。

兵役業務に就いたばかりの新米が、洞察力や推理力を買われて、脱走兵を捕まえに行く憲兵となる。それも制度としておかしいように思えるし、またその憲兵の仕事をしながらも一兵士として他の兵士と同じ宿舎に寝泊まりする、という構造もおかしい。いわば憲兵とは警察。警官が宿舎を共にしていたら普通は見張られていると感じる筈。脱走兵を連れ戻すだけの楽な仕事、と罵られて先輩兵士に暴行される。

日本のドラマだと一発殴られただけで、打ちどころが悪くて死ぬケースもあるが、韓国ドラマは何度も何度も殴られ続け、一体いつまで殴られたら楽になれるのだろう?と考えさせられる程の暴力の脅威と、精神的にそこまで追い詰めるのか、という二重の暴力が止めどなく続く。

この社会の暗部がとことん描かれた作品で、とても考えさせられました。
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