ぺん

D.P. -脱走兵追跡官-のぺんのレビュー・感想・評価

D.P. -脱走兵追跡官-(2021年製作のドラマ)
4.4
「何かしないと変わらない」
韓国の兵役問題に鋭く切り込んだドラマ。イカゲームの影に隠れ気味だったけどこれも観て良かった〜
最初は字幕で観始めましたが、吹替声優も豪華で面白かったです。子安さんの吹替って珍しいよね。
また全6話で見やすいのも嬉しい。

今作はDPこと脱走兵追跡官に任命された主人公が、一癖ある上等兵とコンビを組んで脱走兵を追う。
推理もの、バディもの、アクション、コメディ、軍事、社会派ドラマと様々な要素が盛り込まれスピーディーに展開する。
毎回のように全力疾走しながら脱走兵を追うので役者は大変そう…演技も上手いので観てる側は飽きませんが。
1話は重めにフック、2話からコミカルさも目立って見やすくなり、ラスト5話6話でヘビーすぎるパンチを食らった気分。

脱走兵が逃げる理由の多くは壮絶なシゴキやイジメ、暴力や尊厳の破壊。ドラマのストーリーはほぼ現実にあったことを基にしているらしく胸が痛む。
事実、劇中の2014年はイジメを受けた兵士による乱射事件が起き(軍の対応や裁判の行方も批判される)、悲惨な年だったそう。
除隊すればイジメや虐待は無かったことにされること。知っているくせに見ぬふりをされること。どこの組織にもあることだろうけど、軍は逃げ場がなく上に絶対服従、根性論になりやすいから理不尽よね…

原作はDPを経験した漫画家によるウェブ漫画で「一番読んでほしい相手は軍の上層部」だったとのこと。
作中でも印象深い、日本のアニメ好きで心優しいソクポン一等兵。オタクと貶されイジメ抜かれた彼には、原作者の姿が投影されている気もする。
警察と軍部の仲が悪そうなのもリアル。

兵役と職業軍人経験のある韓国の知人が、向いていなくても兵役に行かねばならない重圧、除隊後も短期訓練へ行かなければならない責任は相当苦しい、と言ってたのを思い出しました。
北朝鮮のことがあるとはいえ…状況が変わらないなら国を守ろうという気持ちにはなれないんじゃないか。劇中でも繰り返される「忠誠!」の言葉は誰に向かって言わされているのか、虚しい。

今作はかなり反響があり、これをきっかけに軍内部も問題点の見直しがされたという話も。
どこまで正されるのか分かりませんが、兵役義務がついて回る韓国の問題は、志願兵のみの国に比べても重いんだろうなと感じた。
良くも悪くも上下関係を重視する国民の姿勢や女性蔑視気味になるところにも影響はあるのかもしれない、というし。
KPOPスターや俳優に推しがいるファンは、兵役のことを思うとやはり気が気じゃないですね…

シーズン2では中間管理職として奮闘するボムグ中士のエピソードがもっと観たいな。
重い展開も相方ホヨルの憎めないアホっぽさに癒されるけど、彼も過去に何かあるのかな?
主人公ジュノ役のチョン・ヘインも上手いので今後が楽しみ。
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