いのしん

イカゲームのいのしんのネタバレレビュー・内容・結末

イカゲーム(2021年製作のドラマ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

人気作品なので気になって観た。悪くはないが、思ったほどはまったり感銘を受けたりすることはなかった。韓国版カイジと聞いており、確かに借金まみれでどうしようもなくなった人たちが一攫千金のチャンスを賭けて奮闘するところはカイジに似ていたが、招待状を送り監禁してゲームに参加させるところはライアーゲームに似ていた。ただゲームだけを見せるのではなく、途中で中断され日常に戻るプレイヤーたちの現実の立場が分かったり、主催者側に潜入する警察官ファン・ジュノ(ウィ・ハジュン)からの目線が描かれ、ゲームの真相や裏側を視聴者に徐々に明らかにしていったり、といった点が作品を面白くさせヒットにつながった原因か。
主催者のゲームで殺され、またお互い殺し合うことで参加者たちは次々に脱落(即死)し、減っていく。最終的に残った一人が賞金を獲得できるわけだが、その黒幕がゲームに参加していたおじいさんオ・イルナム(オ・ヨンス)であり、富裕層である彼と仲間(おそらくVIPたち)は金はあるが何してもつまらないという現実を変えるべく、ただ遊びを楽しむことを目的としてこのゲームが開催されたという背景が、最終話で明かされる。
ギフン(イ・ジョンジェ)が生き延びるために徐々に本性を表していくのが面白い。全体を通して、特に序盤は弱そうなおじいさんを気遣ったり、死にそうな人がいると主催者に助けを求めたり、と良い人ではあるが競争社会に弱く自分が損するタイプとして描かれる。ライアーゲームでいえば神崎直の立場。しかし、ビー玉ゲームではおじいさんの認知症を逆手にとって騙して勝とうとしたり、飛石ゲームが終わった後残った3人の中で、セビョク(チョン・ホヨン)と手を組んでサンウ(パク・ヘス)を殺そうとしたり、結局良い人に見えても、最後は自分が生き残るためにどんな手段も使うという本性は出てくるものなのだ。それに対して、ジヨン(イ・ユミ)やアリ(トリバティ・アヌファム)はそれぞれセビョク、サンウといった相手のことを考え、信用し、「自分だけが」という言動を一切表に出していない。最終的にそういう人は競争社会では死んでしまうのだが、美しい生き方であると思う。
優柔不断で頭も良くなくギャンブル依存症で何をやってもうまくいかない現実を生きるギフンのような人でも、環境によっては勝者となれるという意味で希望を持てるドラマかなと思う(フィクションではあるが)。