なっこ

わげもん~長崎通訳異聞~のなっこのレビュー・感想・評価

わげもん~長崎通訳異聞~(2022年製作のドラマ)
3.0
「生まれたときから爪弾きにされるもんの気持ちがお前に分かるとか」
このセリフがずっと心に残っている。

主人公が自らのルーツをたどる物語。そして仲間に出会い成長する物語だと思ってた、けど、そう単純でもなかった。特に最終話がごちゃごちゃして、異国船で繰り広げられる口論は、一体この人たちは何の話をしているのだろうと分からなくなってしまった。

ただ、敵か味方か分からない魅力的なキャラクターである神頭(髙嶋政宏)の生き抜いて来た人生を知ったときに、ここにこの物語のテーマがあったのかなと考えさせられた。

まるで小さな小舟で大海に放り投げられたように国家からはぐれてしまったひとりの個人の経験は、ぬくぬくと一つの国家の中でだけ生きている人間には想像もつかないはず。その漂流のイメージが心に強く残った。一度放り投げられた人間は、戻ってこれたとしても、もうそこを自分の居場所として素直に愛することが出来なくなるのかもしれない。その切なさ。

個人的にはここまで言葉に特化して物語をつくり上げた作品は無い気がしてて、とても面白いと思った。特に主人公と対峙して家老の周田(武田鉄矢)が長崎弁でまくし立てるシーンが個人的には好きだった。もちろん、それは彼の言っていることに共感しているからではなくて、方言という地の言葉の持つ力の凄味をそこに感じるからだ。対して標準語のトーンで返す主人公の言葉は爽やかな風のようだった。その対比の面白さ。

己の言葉を捨てよ

父のこの言葉の真意はどこにあるのだろう。物語にはまだ続きがありそうだから、通詞として成長していく主人公とともに私ももう少し考えてみたい。言葉にこだわって生きているひとりとして。

※以下各話感想

#1
父を探して
父親を探すことはルーツを辿ること。
人は自身の容貌に現れるルーツを選べない。生まれる場所も選べない。けれど、生きる場所は、そして、どう生きるかは、自分で決められるはずだ。
海岸のシーンが好きでした。
そして、壁となって若者たちにたちはだかってくれる大人が居てくれるのも頼もしい。彼らが長崎でこの先どう生きていくのか、4話分しっかり見守りたい。
なっこ

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