“実写化”の概念に大きく影響を与えそうなドラマ。
いや〜〜〜めちゃくちゃ面白かったです！
原作は全く知らないので前情報はキービジュアルくらいでした。もう少し小難しくて憂鬱な物語かと思っていたら、思ったよりジャンプのような少年漫画風でした。ダークな世界観ですが根底に溢れる善性とドリームの優しさが沁みます。
本作は内容の面白さをさることながら”実写化”という概念を根本的に変えそうな衝撃を感じ、それがとても面白かったです。以下、長〜〜くなりそうですが、だらだらと書いていきます。
①映画ではなくドラマ
近年強く感じるのはドラマと映画の映像的な差はほぼなくなりました。制作費や映像の豪華さという視点で映画にできてドラマによってできないことは実質ありません。そして当然ドラマは映画より尺が長いので原作を実写化する際にエピソードをカットしたり再構成する必要がなく限りなく原作の構成に合わせることが可能です。本作もその良さを非常に強く感じた作品でした。
②ドラマではなく連載作品の”尺”感
サンドマンでさらに感じたのは、いわゆる「ドラマ」じゃない！という尺感。私は原作を読んでいないのでサンドマンが厳密に漫画なのかイラスト付きノベルなのか細かい形式は詳しくないのですが（なんかアメコミっていろいろありますよね）、構成はザ連載作品という尺感でした。掴みの1話があり、短編的なミッションをこなしつつ中目標を達成し、人気が出てきたところで長編が始まる。日本ではジャンプなど週刊連載で親の顔よりも見る流れです。
本作もこのザ連載作品という流れでドラマとしては非常に新鮮でした。1-6話は典型的な”新連載的”な進行で7話以降が連載が軌道に乗ってきた長編です。また映画やドラマは基本的に尺から逆算して制作されるので長いエピソードはカットされて短くされるか、逆に1シーズンとして長く再編成されるかのどちらかでしょう。本作でいえば道具を取り戻すまででシーズン1を引っ張るか、もしくはローズ編も1-2話に短くするかのどちらかだと思います。
しかし、サンドマンはそのまま原作のペースをそのまま実写化したのだと思います。こういった進行は例えば日本の漫画のアニメ化なら普通ですが、ドラマでは非常に珍しいなと感じました。おそらく普段ドラマをたくさん観ている人ほど変な時間配分に感じたのではないかなと思いました。
③一本道ではないストーリー展開
追加で少し感じたのは、やはり連載作品って必ずしも一本道的なストーリー展開じゃないことが特徴ですよね。映画やドラマは基本的にストーリーが一本道で、様々な要素が収束することはあっても完全に何にも繋がらないエピソードはほとんどないんですよね。
ただ連載作品は大きな目標みたいなものは作品を通してあったとしても、途中で全く本筋と関係ないサブエピソードも普通にありますし、また途中で提示された目標を全て解決してしまってまた新たに目標を提示するケースも多いです。本作でいえば5話、6話の短編感であったり、道具を揃えて一度目標が完結してしまい、また新たにローズ編が始まる感じです。
④ハリウッド的にならなかった作風
これはオマケ的な話ですが、サンドマンは何度もハリウッド実写化が頓挫したと聞きました。映画化は①で言及した物語の長さで頓挫したのだろうな〜と予想できますが、それ以外にもいわゆるハリウッド的（アクション映画化 etc.）といった作風の尊重されなさもあったようだという話をTwitterでチラッと見かけました。実際に本作を観て納得の一言で、こういった少し哲学的で神秘的な世界観が守られて実写化されたことを非常に嬉しく思います。
ここまでいろいろ書いてきましたが、全て共通していることは「原作の要素が尊重されて実写化された」ということだと思います。映画ではなくドラマであったことも、ドラマ的ではない尺配分と進行も、アクションなど派手な画に寄らなかった演出も、全て原作をそのまま実写化した結果と言えます。
設定変更は当たり前で、原作があると言っても実質的に脚本家がほぼ全て再構成していたり、なんならキャラクターとアイデアレベルのストーリーだけ借りてオリジナルストーリーだったりというのが常識のハリウッド実写化において、ここまで原作をそのまま実写化したことは、非常に新鮮でした。（実際に読んでないので細かいところは知りませんが明らかに映画的ドラマ的でない構成であることが観てわかる）
日本だとちょうど進撃の巨人あたりでアニメ業界で（それまでのドラゴンボールやワンピース的なアニメ化ではなく）原作を尊重しそのまま高クオリティでアニメ化することの重要性、みたいな気運がありましたが、実写化でも同じような流れになるのかな〜という希望が持てる作品でした。
