不条理で冷酷な日常から逃れ、男は夢のような世界を探し求めていたのだろうか。
謎に満ちていて、愛にも満ちている駒子が迎えてくれる世界に憧れない人は居ないだろう。でも、どこの世界にも魔の手は忍び寄っていて、どうにも逃れる術はない。どこまで行っても暗闇は広がっており、抜けたと思っていたトンネルの先には触れてはいけない世界がある。それが雪国。白く覆われた足元の下では何かが蠢いている。逃れることなど出来ない。
最近の温泉街はテーマパークのような装いで、ダークな世界観は殆どない。ディズニーリゾートを目指しているのか！というぐらい整っている。プチグルメに、おしゃれ雑貨に、時にはチームラボ。もう、どこを探しても駒子なんて居ない。越後湯沢温泉には、まだ「雪国」の世界は残っているのだろうか？ 写真で見る限り、かなり開発が進んでしまったようだし、このドラマのロケ地は会津だったようだ。また、福島に行ってみたくなった。
最近は奈緒の虜なのである。この笑顔には騙される！と確信しながら、これは嘘だと分かっていながら、なんだか引き込まれる。「にんげんこわい」も素晴らしかったし、星新一シリーズも早く観たい。
静かに、ゆっくりと展開する物語で、ただ瞬きするだけで沢山を語る役者がいて、テンポが速いだけの空虚なドラマでは味わえないものが、ここにはある。高橋一生の無機質な感じも心地良く、森田望智の粘着力のある佇まいにも目が離せない。NHKの純文学シリーズと勝手に呼んでいるのだけれど、芥川の「STRANGER」から川端の「雪国」に来たので、次は太宰だろうか。楽しみにしています。
