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ステーション・イレブンのBlueのレビュー・感想・評価

ステーション・イレブン(2021年製作のドラマ)
5.0
ウォッチマン、地下鉄道、ゲームオブスローンズ、チェリノブイリと毎年個人的ベストドラマが生み出されているけど、今年はこのステーションイレブン個人的ベストかなと思います。

今までになかったドラマの味わいがある。

特に第5話の空港という人々が行き交う、人生が交錯する場所でのストーリーは、テレビ/映画の演技ではなく舞台劇の演技と音楽によって構成されていると感じました。
そして最終話も舞台劇的な演出がされていて、ドラマではなく舞台を見ている感覚として見るととても味わい深かった。


原作小説は2015年にベストセラーになっていてパンデミックそのものが描かれているわけではありません。

むしろその後の生き残った人々が過去とどう向き合うか、また死滅状態に近い後に生まれてきた子供達にとって相容れない世代のギャップと価値観が浮き彫りになるという事を描いたドラマだと感じました。

ドラマではパンデミック後に世界経済は破綻して人間の文化は残り、シェイクスピアの劇を中心に地方を興行し練り歩く劇団の女優が主人公になっています。
そしてハムレットを演じる。
猜疑心が連鎖して死んでいく王族の物語、ハムレット。まぁ一言では言えないし、読んではいるけどところどころ抜けているので詳しくは書けませんが、ドラマでもハムレットは色々な解釈ができるという文言がされている通り、訳し方で印象が変わる劇作品です。

太宰治も新ハムレットという物語を書いていたり志賀直哉もクローディアスの日記というのを書いていますね。

読む人によって解釈が違うハムレット同様、このステーションイレブンもまた、見返す度に印象が変わるドラマになっているのだろうし、故の舞台的演出が必要だった、という事だと思います。

物語の本質は掴めていないなと実感がありますが、見終わった後の味わいにこの物語をどう解釈するか余白があって、そこが本当に好きになりまた。
個人的にこのドラマを村上春樹が見たらどんな感想を言うのだろうかと思いました。

率直に言ってあの洗練された文章には催眠術にかかったように一気に読破してしまうのだけど、物語の内容に面白い、共感した事はありません。しかし村上春樹の作家性、死と交錯する人々、オウム真理教の事件以降、急速に宗教に近寄った1Q84など、非常にシンクロするところが多いと感じました。

個人的には1話目と5話目そして最終話が本当に印象に残りました。ドラマの中で演劇舞台をやる構成、過去と現在の見せ方、演出がとても素晴らしくこれから何度も見返すドラマになりそうです。

できればシーズン2は作って欲しくないですねw。このまま終わってあてもなく想像の世界で歩いていきたい、そんな作品でした。
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