サンタフェ

1899のサンタフェのレビュー・感想・評価

1899(2022年製作のドラマ)
4.0
多言語の吹替が面白い!

Netflixで有名なDARKスタッフの最新作。DARKと同じく基本的には謎で引っ張る作風で、さらにそこに多言語という要素が加わりました。

まず私はDARKの謎作風が少し苦手めで、というのもあまりにも「ここが謎ですよ〜」という強調演出と、情報開示も丁寧なので、先の展開が常にだいたい読めてしまうという点があまり好きではありませんでした。詳しくはDARK感想に記載しています(https://filmarks.com/dramas/804/1909/reviews/8209334)。

本作も謎に関しては同じような作風で、結局1話冒頭のナレーションでだいたい根本は全部ネタばらしされていますし(そしてその手法もDARKと同じなのでより予想がしやすい)、話が進むにつれて明らかになる謎も丁寧に謎が明らかになるちょっと手前に手がかりとなる情報が匂わされるので展開はほぼ全て予想がついてしまいました。私はどちらかというとミステリはほとんど予想せずに本編を観て真相にびっくりしたいタイプなので、本作やDARKのような露骨に「考えてね〜」演出で考察を強いる作風は苦手です。明かされる快感もなくなってしまいますし。

ただ、本作はDARKと比較すると謎に対する考察以外にも、シンプルに近代舞台の衣装の美しさや、多言語が交わる面白さ、豪華客船で人が死ぬミステリ要素、言語によって自然に形成されるコミュニティ感、疑心暗鬼になって対立し合うコミュニティスリラー、人種とLGBTに対する差別や国籍や言語を超えた恋/絆、など作品として楽しめる要素が幅広く観やすかったです。

特に面白かったのは多言語の部分で、オリジナル言語+字幕はもちろん多言語の趣を楽しめます。しかし、(日本語吹替はないのですが)吹替版を聞くと全ての言語が一つの言語に吹き替えられています。そのため「お互いに話が通じない」という展開が不自然になるため、絶妙に台詞が差し替えられているのです。例えば↓のようにです。

オリジナル台詞「(言語的な意味で)あいつは何を言っているんだ」
吹替台詞「何を訳のわからないことを言ってるんだ」

オリジナル台詞「どうせスペイン語は分からない」
吹替台詞「誰もおれの言うことなんて気にしていない」

もちろんこれは吹替翻訳者の独断ではなく、元々のスクリプトがどちらでも成り立つように演技と台詞どちらも巧みに構成されているようです!とても面白かったです。

多言語作品は近年の海外ドラマの一つのトレンドなのですが、吹替で視聴する際にメイン言語以外は字幕となり実質的に吹替の意味がないという問題がありました。本作はその問題を解決しています。それだけにNetflix Japanが日本語吹替を用意しなかったことに失望しました。非常にもったいない。

作品全体の感想に戻ると、謎に対するアプローチが私はあまり合わないのと、同じようなテーマだと今年はどうしてもセヴェランスを思い出してしまいそちらの方が巧みだったなと感じてしまいました。

ただ上記のようにDARKに比べて楽しみどころがたくさんあり嬉しかったです。DARKはシーズン1で切ってしまったのですが、本作もシーズン2も楽しみに待ちたいと思います。
サンタフェ

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