篠村友輝哉

空白を満たしなさいの篠村友輝哉のレビュー・感想・評価

空白を満たしなさい(2022年製作のドラマ)
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予想以上の見応えと完成度だった。特に3、4話の緊張感。
原作を読んだときから、無理に立ち上がったり前を向こうとすることこそが、自分を追い詰めることになるということや、自分のなかの鬱屈、嫌いな自分を否定しないという優しさに共感していたけれど、この作品や分人主義に出会えていたことで、自分は救われてきたんだよな…と改めて思いながら観ていた。
やはり佐伯役の阿部サダヲさんの演技が強烈で、ドストエフスキーとウエルベックを掛け合わせたようなこの人物の衝撃性を体現していて、その凄みと、彼を創造した平野さんの凄みを再認させてくれた。
また、佐伯の自殺を未遂にして、彼にゴッホの自画像のくだりと、「生きたい」という言葉を語らせる脚色は、原作を深く理解していないとできないことだと思う。徹生が佐伯に宛てた最後の手紙もそう。唸らされた。
篠村友輝哉

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