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この世界の片隅にのmitakosamaのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2018年製作のドラマ)
3.9
1話
先行したアニメ映画が歴史に残る傑作だった事もあり、アニメ映画とはアプローチを変えてきたという印象。同じ事をやってたらアニメには勝てないからね。例えば中島本町の再現はセットやロケやCGで証言するには限度があるし。
むしろ今作はドラマ部分を強調した印象。径子さんは意地悪小姑感を全面的に出した。敢えて判りやすくベタに振り切ったんだろうね。
一方で生身の人間が演じる強みも感じた。一番はすずさんの幼少期と成人した姿を、子役と松本穂香の二人で演じ分けた。マンガもアニメも、こうの史代タッチが元々幼いので年齢描き分けが明確じゃなかったからね。しかもアニメは子供時代も大人時代ものんちゃん1人で演じ分けたので、成長した1人の人間という描写は実写の方が当然利があったと思う。
また海苔を救うシーンなども実写ならではの表現だったと思う。
現代の女性がすずさんを回想するというドラマオリジナルの展開がどう進むのか?

2話
前回出てきた謎の女性がドラマオリジナルの刈屋さんの娘だと判明。
すずさんのボーッとしたキャラクターがより鮮明になった感じ。只どちらかというと不思議ちゃんキャラに近い。この辺は独自のアプローチと見るべきだと思う。
周作とすずが海を見るシーン。アニメ映画版は史実に照らしあわせ“駆逐艦・Uボート・潜水母艦”に変更しているが、原作通り“雪風・愛宕”になってる。ここはアニメ程は徹底した時代考証にはこだわらないと判断したんだね。まぁテレビドラマという性質上仕方が無い。
ドラマと映画は違うから作り方のアプローチが違う事を認識することが重要ね。

3話
リンさんが絡む話。朝日遊郭のシーンはホント良くできてる。
径子さんがあからさまに意地悪お姑さん。本来はただ気性が荒いだけの人なんだけど、そこら意図的に変えてるね。
ありこさんのシーンは凄い雰囲気出てる。やっぱり原作からのアレンジがあまり無い方が好きかなぁ。でも哲と周作の初遭遇はオリジナルエピソードだが、これは上手いね。
窓ガラスのテープは“×”になってる。アニメでは史実に照らし合わせ“井”の字にしてるのに。そういう所は参考にしなかったんだね。
セットやロケの作り込みは見る度に感心するわ。

4話
色々とオリジナルの展開が現れた今作。径子さんの息子のヒサオが現れたり、リンさんと周作とのエピソードの前フリなど、色々と工夫が見えるね。

5話
哲が泊まりに来るエピソード。基本はそのまんま。割と忠実。
すずの兄要一の遺骨が戻って来た時は、原作とは逆に凄いウィットになった。このウィットさはこうの作品らしからぬ表現かな。
テルが初登場。カワイイ。

6話
呉に空襲が始まるシーンから。飛行機多いな!この辺のリアリティはちょっと気になる。
この辺りから戦争が本格化するハードな展開が続く。
すずさんとリンさんのお花見のシーンはアニメに先駆けての映像化。コレは凄く良い。

しかし、改めてわらべ歌は合ってない気がする。
「夜になったカラス♩空になれぬウサギ♫」久石譲は一流の作曲家であることは間違いないが、盤劇としては世界観に合ってないことも多いと思う。
現代の呉に当時する老女が戦災孤児のヨウコちゃんだと判明したね。

7話
晴美さんが亡くなる展開から。戦局が厳しくなり物語が佳境に入る。
ドラマオリジナルキャラクターの刈谷さんの娘がすずを慰めるシーン。原作ではすずさんにとって対等な友達がリンさんだけだったのを敢えて変えた訳やね。
ドラマとしてはテンポが早いのはわかるのだが、アニメが輪をかけてハイテンポなので、ドラマ版は会話がゆったりしてる印象はあるな。今話は特にそう感じた。
アニメの「あんたの場所はここでもええし何処でもええ」は原作通りに「すずさんが嫌にならん限りすずさんの居場所はここじゃ」になってるね。
草鞋を編むシーンはすずさんが不器用になってる。片手のすずさんより経子さんの方が不器用だったっいうギャグは無くなった。
原作特有の笑いの緩急が欠けてるのがちょい惜しい。
でも俳優陣の熱の入り方は素晴らしいね。

8話
いい雰囲気。いい感じに、この世界の片隅にの世界観が現れてる。そして戦争ドラマらしい戦争ドラマになったと思う。
すずが原爆以降から凄い不機嫌。基本おっとりのすすさんな感じではないね。でもこれはこれで良いと思った。
太極旗を見ての「よその国を〜云々」の台詞はなし。政治的ニュアンスは入れたくなかったのね。
アニメ映画版でなかった枕崎台風が描かれてるのが嬉しいね。
刈谷さんに婿が来るくだりはオリジナルだね。

9話
この物語の本質である、希望と再生をキチンと現したのは本当に素晴らしい。セットやロケ、俳優陣の熱量も力が入っていて製作サイドのこの作品にかける情熱を感じることができた。
オリジナルキャラのエピソードも最初は蛇足に感じたが、各々ちゃんと締めてくれて良かった。
ラストのカープ女子すずさんも、ネタでは語られていたが、まさかホントに映像化したとは。嬉しいサプライズだったね。
原作・アニメ映画についで、良いドラマだったっ思います。
スタッフのみなさんお疲れ様でした。
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