トケグチアワユキ

ももさんと7人のパパゲーノのトケグチアワユキのレビュー・感想・評価

ももさんと7人のパパゲーノ(2022年製作のドラマ)
4.9
たまーにリスカ(手首じゃないけど)するももさんのことを、現在(2022年)なら割と肯定的に見てくれる人も増えてきたし、ある日プツンと糸が切れて野宿の旅が始まってもすんなり受け入れる環境になって来たけど、今だって保守的な/封建的な人々(あと勝ち組の人たち)の中には、これを〈甘え〉だとか〈なめてる〉と断罪する方々は、年齢や性別に関係なくすごく多い。

このドラマの登場人物に自分を重ねて見るなんて短絡はしちゃいけないと制する冷静さは持って観たつもりだけど、それでも今まで私に「甘えたこと言ってる」だの「仕事を舐めてる」「人生から逃げてる」と言うような言葉を、なんの疑問も、もっと言えば躊躇もなく投げつけた人のことがフラッシュバックしたし、それに反論できる気は今もしないけど、その人たちへの抵抗感は絶対きえない。

そんな状態で社会の底辺を、間もなくリタイアせざるを得ない年齢まで生きてきてしまった。
ずっと〈甘え〉だの何だの言われて育ち生きてきたから、その価値観に洗脳されてるし、ももさんにも出会うパパゲーノたちにも〈甘えてる〉と思う自分と、今の自分の生き方のすり合わせがうまくできず、このドラマを観ているあいだ、開放感と自己否定や罪悪感がない混ぜになってすごく居心地が悪かった。

私も自分の価値観と葛藤し続けたし、死なないために逃げ続けた。
それももう50年を超えた。
今やっと、こういう〈違和感〉を目に見える形にしてくれる人たちがあらわれてきた。
いや、今までもこういうことをテーマにしている人はいたのかもしれない。
気づいてないだけかも。
ただ、自分と同じ感性の人を探して連帯するなんて考えも時間もなかったな、私の生活に。
逃避と(被)排除の半世紀だった。

企画と演出はドキュメンタリー畑の人らしい。
そしてこういうテーマに親和性の高い加藤拓也の作。
ありがとう。

かなり私自身に共通項の多いドラマだったけど、うれしいとも思わないし、このドラマに私を語らせたいとも思わない。
このドラマを自己主張のプラカードにして、社会に自分をプレゼンする気にもデモする気にもなれない。
長く生きると、社会の構造も経済の必然もイヤというほど見えてくる。
その中で生きる以外の選択肢はほぼない。
別の選択肢を手っ取り早く探すとしたら、死だ。結局、身も蓋もない帰結になる。
だから、すり合わせて合わせて合わせまくって、すれっからしになった私は、もうそういう承認欲求はない。
隅っこでこっそりインモラルに生きていられればそれでいい。
重要なのはモラルにしばられないことかなと思って生きてる。

ここまで読んでくれた方、ぜんぜんドラマ自体の感想じゃなくてスミマセン。


********************
https://twitter.com/nhk_news/status/1710424201956606399?t=PH_Vs0Mg8GbxUSghS6Zf6Q&s=19