タケオ

HOMELAND/ホームランド シーズン2のタケオのレビュー・感想・評価

4.0
 各キャラクターがしっかりと掘り下げられていき、物語は一層の盛り上がりを見せ始めるが、シーズン2の「真の主役」はキャリー(クレア・デインズ)でもブロディ(ダミアン・ルイス)でもなく、アルカーイダの幹部にして一連の事件の黒幕でもあるアブ・ナジール(ナヴィド・ネガーバン)だといっても過言ではないだろう。
 かつて無人機の攻撃によって息子を殺されたアブ・ナジールは、当時作戦の指揮をとっていた元CIA長官にして現アメリカ合衆国副大統領ウィリアム・ウォルデン(ジェイミー・シェリダン)への復讐を誓っている。もはやイスラムの主義や思想は関係ない。極めてパーソナルな「怒り」こそが全ての動機である。アブ・ナジールの真の恐ろしさは、地位や名誉の全てを擲ってでも行動に出るところだ。いざとなれば自ら進んで最前線にも飛び出すし、なんなら自分の命すら惜しいとは思っていない。もちろん、いかなる交渉にも応じることはない。愛するものを奪われたアブ・ナジールには、もはや「復讐」の望み以外には何もないのだ。そんな彼の復讐計画の全貌が遂に明らかとなる怒涛のクライマックスは必見。政治、宗教、人種、思想といったもろもろが、「父親」としてのアブ・ナジールの執念を前に意味を失う。愛するものを奪われた男の純然たる「怒り」が、アメリカ合衆国に対して最悪の形で勝利を収める衝撃のラストには、一周回って歪んだカタルシスすら宿っている。
 「ずるずると対テロ戦争を続ける中で、自らが生んでしまった-怒り-によってアメリカ合衆国が敗北する」というシナリオには舌を巻くばかりだ。単純な善悪二元論で割り切ることのできない報復合戦を「そのもの」として描き切ってみせるスマートな語り口、正に『HOMELAND/ホームランド』の真骨頂である。
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